日本骨代謝学会

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関節リウマチの骨粗鬆症に対するビスホスホネート製剤の有効性 -ミノドロン酸とリセドロン酸の比較-

Effects of once-monthly minodronate versus risedronate in osteoporosis patients with rheumatoid arthritis: a 12-month randomized head-to-head comparison.
著者:Kumagai K, Harigane K, Kusayama Y, Tezuka T, Choe H, Inaba Y, Saito T.
雑誌:Osteoporos Int. 2018 Mar 24. doi: 10.1007/s00198-018-4494-9.
  • 関節リウマチ
  • 骨粗鬆症
  • ミノドロン酸

熊谷 研

論文サマリー

 関節リウマチ(RA)では傍関節性骨粗鬆症のみならず全身性骨粗鬆症を合併する例が多く、骨折リスクも高いことが知られている。RAの疾患活動性コントロールに加え、骨折リスクに応じた十分な骨粗鬆症治療が必要である。骨粗鬆症治療薬としてはRAによる骨吸収促進とステロイド薬使用を考慮すると、ビスホスホネート製剤等の骨吸収抑制剤が適するとされている。ミノドロネート(MIN)は日本で開発されたビスホスホネート製剤であり、原発性骨粗鬆症に対する有効性が報告されている。本研究ではRAを対象にMINの有効性について、リセドロネート(RIS)と直接比較検討した。

 RAで骨粗鬆症と診断され、研究内容を十分説明し同意が得られた83例をMIN50mg/月投与群(MIN群)42例とRIS75mg/月投与群(RIS群)41例に無作為に割付した。骨密度(BMD)はDXA法を用いて投与前、投与後6ヵ月、1年の腰椎および大腿骨頚部を測定した。骨代謝マーカーは、骨吸収マーカーとして血清骨型酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ(TRACP-5b)、血清I型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTX)、骨形成マーカーとして血清骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)を測定した。

 1年以上投与を継続し観察し得た症例はMIN群38例(90%)、RIS群36例(88%)であった。投与後1年のBMDは腰椎(変化率:MIN群3.8%, RIS群3.6%)、大腿骨頚部(変化率:MIN群2.2%, RIS群1.9%)ともに両群で有意に増加した(P¥<0.05)が、両群間に有意差はなかった。投与後1年の骨代謝マーカーは血清TRACP-5b(変化率:MIN群-36.3%, RIS群-19.3%)、NTX(変化率:MIN群-27.1%, RIS群-17.3%)、BAP(変化率:MIN群-30.2%, RIS群-19.4%)のいずれも両群ともに有意に減少し (P<0.05)、変化率は全てにおいてMIN群がRIS群に比べて有意に大きかった(P<0.05)。

 RAの骨粗鬆症を対象としたMINとRISの直接比較では、BMDは両者間で有意差はなかったものの、骨吸収マーカーはMINの方がRISよりも有意に低下する結果となり、MINはRAの骨粗鬆症に対しても有効な治療薬となる可能性が示唆された。

熊谷 研

著者コメント

 ミノドロン酸は日本で創製されたビスホスホネート製剤であり、強力な骨吸収抑制作用を有する薬剤です。これまで、原発性骨粗鬆症に対する有効性については報告されていましたが、RAを対象とした他剤とのhead-to-headの比較はされていませんでした。RAでは骨折リスクが高くなることが知られていますが、骨粗鬆症治療介入による予防が重要と考えられます。今回の試験ではミノドロン酸のRA患者での有効性が示され、骨粗鬆症薬物治療の選択肢を広げることができるものと期待しています。本研究が論文掲載されるにあたり、多大な協力をいただいた共著者の先生方ならびに指導いただいた齋藤知行先生にはこの場を借りて感謝申し上げます。(横浜市立大学大学院医学研究科運動器病態学/整形外科・熊谷 研)