日本骨代謝学会

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鎖骨頭蓋骨異形成症由来iPS細胞は、変異修復によりラット頭蓋冠骨欠損モデルでの骨再生を改善する

Targeted reversion of induced pluripotent stem cells from patients with human cleidocranial dysplasia improves bone regeneration in a rat calvarial bone defect model.
雑誌:Stem Cell Res Ther. 2018 Jan 22;9(1):12. doi: 10.1186/s13287-017-0754-4.
  • 疾患iPS細胞
  • 骨芽細胞
  • ゲノム編集

齋藤 暁子

論文サマリー

 骨芽細胞分化のマスターレギュレーターであるRUNX2のノックアウトマウスは骨芽細胞分化異常を伴う骨形成不全を呈する。ヒトではRUNX2は鎖骨低形成、頭蓋骨縫合閉鎖不全などの症状を示す鎖骨頭蓋骨異形成症(CCD)の原因遺伝子である。CCDは骨形成不全および骨粗鬆症に羅患しやすく、骨損傷に対する患者組織の自家移植はしばしば困難である。今回、ゲノム編集技術を用いてRUNX2遺伝子変異を正常化したiPS細胞を基にした、再生医療の可能性を検討した。

 まずインフォームドコンセントを得た2名のCCD患者より口腔内細胞を採取し樹立した線維芽細胞のRUNX2変異を解析し、Case1はExon7のNMTSドメインに、Case2は Exon1のQ/Aリッチドメインにナンセンス変異を有することを確認した。これらの線維芽細胞へセンダイウイルスベクターを用いて山中4因子を導入し、常法に従いCCD-iPS細胞を樹立した。さらにCRISPR/Cas9法を用いてCCD-iPS細胞のRUNX2変異塩基を正常塩基と置換したiPS細胞をRevertant-iPS細胞として新たに作製した。これらのiPS細胞を骨芽細胞分化誘導すると、CCD-iPS細胞ではRevertant-iPS細胞に比べ、ALP、OSX、DLX5、OCNといった骨芽細胞分化マーカーの発現が有意に低下することが明らかとなった。次にヌードラット頭蓋冠骨欠損部に骨芽細胞分化誘導後の細胞を足場材と共に移植し4週間後の骨再生の状態を評価したところ、Revertant移植群では欠損部がほぼ新生骨で修復されたのに対し、CCD移植群では新生骨の再生が遅延していた。以上より、RUNX2遺伝子変異を正常化したiPS細胞は骨芽細胞分化も正常化し、骨欠損モデルに移植すると有意に骨再生を促進することが示され、変異正常化iPS細胞を基にしたCCDに対する新たな治療法の可能性が示された。さらにCCD-iPS細胞および変異正常化iPS細胞は、いまだ不明な点が多いヒトでの骨芽細胞分化におけるRUNX2の役割を解明するために有用であると考えられた。

著者コメント

 私の所属する研究室では、顎骨に疾患のある方からiPS細胞を作ろうというところから始まり、現在までに鎖骨頭蓋骨異形成症以外にも疾患由来のiPS細胞を作製し研究を行っています。iPS細胞の作製は共同研究者である産総研・中西先生らのセンダイウイルスベクターを使うことでかなり安定してできるのですが、その後のゲノム編集技術を用いて変異を正常化するところは、変異部位やiPSクローンにより組み換え効率が変わるため一苦労でした。今回ご指導いただいた東教授をはじめ、共同研究者の先生方、ご協力いただいたすべての先生方に心より感謝申し上げます。(東京歯科大学 生化学講座・齋藤 暁子)