日本骨代謝学会

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RA患者での経口ビスフォスフォネート製剤(BP)からのデノスマブ(DMAb)もしくはテリパラチド連日製剤(TPTD)への切り替えが関節破壊に及ぼす影響についての検討

Impact of switching bisphosphonates to denosumab or teriparatide on the progression of radiographic joint destruction in patients with rheumatoid arthritis
著者:Ebina K, Hirao M, Hashimoto J, Matsuoka H, Iwahashi T, Chijimatsu R, Etani Y, Okamura G, Miyama A, Yoshikawa H.
雑誌:Osteoporosis International. 2018 Jul;29(7):1627-1636
  • 関節リウマチ
  • 骨粗鬆症
  • 関節破壊

蛯名 耕介
共著者の先生方と共に;写真下段右より筆者、吉川秀樹教授、平尾眞先生、
上段右より岩橋徹先生、三山彬先生、惠谷悠紀先生、岡村元佑先生

論文サマリー

 関節リウマチ(以下RA)患者においてはTNF-α・IL-6・IL-17などの炎症性サイトカインにより破骨細胞の分化が誘導され、骨吸収が亢進する。この骨吸収の亢進に伴う骨量の減少や、皮質骨の脆弱化は関節破壊の進行と相関する。関節リウマチやステロイド内服に伴う骨粗鬆症においては、ビスフォスフォネート(BP)製剤と比較したデノスマブ(DMAb)やテリパラチド(TPTD)の有意な骨密度増加効果などが報告されている。しかし実臨床においてはBP製剤からこれらの薬剤に切り替えられる機会が多いと考えられ、我々は以前にRA患者における内服BP製剤からのDMAbやTPTDへの切り替えが、骨密度や骨代謝マーカーに及ぼす効果を報告した(Ebina K et al. J Bone Miner Metab. 2017)。一方、DMAbはRAに伴う骨びらんを抑制することが報告されているが、BP製剤からの切り替え時の効果や、BP製剤・DMAb ・TPTDの関節破壊の抑制効果を直接比較した報告はなかった。本研究では骨粗鬆症治療薬による骨代謝回転の変動が、RAの関節破壊進行に与える影響についての検討を行った。

【方法】
 Bio非使用でBP製剤で治療中であった女性RA患者155名で、主治医判断・患者嗜好により(1)BP継続群(63名)・(2)DMAb切り替え群(61名)・(3)TPTD切り替え群(31名)に割り付けられた患者を後ろ向きに調査した。患者背景を補正した各群30名を抽出し、関節開始・骨粗鬆症治療薬変更12月後の関節破壊進行をmodified total Sharp score変化量(Δ12M mTSS)で評価した。

【結果】
 観察開始時の全患者背景は68.2歳/RA疾患活動性(DAS28-CRP) 2.4/腰椎T-Score -2.0/前BP製剤投与期間 44.8か月/骨吸収マーカー(TRACP-5b)286.4 (mU/dl)/modified total Sharp score(mTSS)87.0であった。Δ12M mTSS(平均値±標準誤差)はBP(1.0±0.3)・TPTD(1.7±0.6)・DMAb(0.3±0.1)であった(TPTD v.s. DMAb; BP v.s. DMAb; <P<0.05)。Δ12M mTSS≧3(Clinically relevant radiological progression)の割合は(%)TPTD(20.0)・BP(10.0)・DMAb(3.3)であった(TPTD v.s. DMAb; P<0.05)。6か月後のTRACP-5bの変化率(%)(Δ6M TRACP-5b)はTPTD(64.9)・BP(-4.6)DMAb(-29.0)であった。Δ12M mTSSと有意相関した因子(DAS28-CRP・抗CCP抗体陽性・Δ6M TRACP-5b)を多項ロジスティック回帰分析すると、Δ6M TRACP-5bが有意な相関を示した(β=0.30, 95% CI=0.002-0.016; P <0.01)。

【結語】
 内服BP製剤からのDMAbやTPTDへの切り替えに伴う全身性の骨吸収状態の変化は、局所の関節破壊進行と相関する可能性が示された。

著者コメント

 本研究はRA骨粗鬆症に対するBP製剤からのDMAb・TPTDへの切り替え効果を調査した際に、ふと“骨粗鬆症治療薬による骨代謝回転の変動は関節破壊に影響を及ぼすのだろうか?”との疑問を抱いたことがきっかけでした。論文化の際には多数のレントゲンの読影やreviewerの先生方の厳しい御指摘など多くの苦労を伴いましたが、皆様の御協力によりRA関節破壊と骨代謝の関連を示す新たなエビデンスを提示することができました。最後になりましたが、研究を御指導・御協力頂いています吉川秀樹教授、並びに大阪大学整形外科の皆様方にこの場をお借りして心より感謝申し上げます。(大阪大学大学院 医学系研究科 整形外科・蛯名 耕介)