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ALK2遺伝子関連疾患におけるFKBP12とII型BMP受容体の役割

Effects of FKBP12 and type II BMP receptors on signal transduction by ALK2 activating mutations associated with genetic disorders.
著者:Machiya A, Tsukamoto S, Ohte S, Kuratani M, Fujimoto M, Kumagai K, Osawa K, Suda N, Bullock AN, Katagiri T.
雑誌:Bone. 2018 Mar 15;111:101-108.
  • FOP
  • 骨形成蛋白(BMP)
  • ALK2

町谷 亜位子
片桐岳信先生とASBMRにて

論文サマリー

 進行性骨化性線維異形成症(FOP)は、全身の骨格筋や腱に異所性骨を生じる遺伝性疾患で、異所性骨を誘導する成長因子Bone Morphogenetic Protein(BMP)の膜貫通型セリン・スレオニンキナーゼ受容体であるALK2の機能獲得型変異で発症する。最近、小児の脳腫瘍であるびまん性内在性橋グリオーマ(DIPG)症例から、FOPと共通する複数のALK2変異体が見出された。さらに、家族性骨格形成異常を呈する症例からも、新たなALK2変異が報告された。我々は、FOPのALK2変異体はII型BMP受容体によって活性化されやすいことを報告した。一方、免疫抑制剤FK506の結合タンパク質であるFKBP12は、細胞内でI型BMP受容体と結合し、シグナル伝達を抑制する。FOPのALK2変異体は、立体構造の変化によりFKBP12との親和性が低下することで活性化される可能性が提唱されている。本研究では、最近、新たに同定されたALK2変異体の活性を調べるとともに、FOPにおけるALK2変異体の活性化機構を明らかにすることを目的とした。

 重篤なFOPから見出されたALK2変異体であるR258G変異体とDIPGのG328V変異体は、典型的FOPのR206H変異体と同様に、BMP非存在下でもBMP活性を誘導する機能獲得型変異であった。一方、家族性骨格形成異常から見出されたF246Y変異体は、野生型と同様のリガンド依存的なBMP活性を示した。FOPとDIPGの機能獲得型ALK2変異体の活性は、FKBP12の共発現で抑制された。しかし、FOPで見出されたP197_F198del_insL変異体は、FKBP12存在下でも抑制されなかった。結晶構造解析から、P197_F198del_insL変異体のL197残基は、FKBP12のD36残基と立体的に衝突し結合できない可能性が示された。免疫沈降実験を行うと、FKBP12はR206H変異体と結合したが、P197_F198del_insL変異体とは結合しなかった。II型BMP受容体を共発現させると、FKBP12とALK2は結合せず、FKBP12による抑制を受けなくなった。

 FKBP12は、FOPやDIPGのALK2変異体でも、F198とL199を介した結合によりシグナルを抑制することが明らかとなった。しかし、P197_F198del_insL変異体のFOP症例でも、早期の異所性骨化など重篤な症状は報告されていない。ALK2変異体は、FKBP12の過剰発現で抑制されるものの、FOPの異所性骨化にはII型BMP受容体によるALK2変異体の活性化が重要と考えられた。

 

町谷 亜位子

著者コメント

 FOPは、200万人に1人の割合で発症する難治性希少疾患で、病態の解明や有効な治療法の確立が切望されています。私は、埼玉医科大学ゲノム医学研究センター片桐岳信先生のご指導の下、博士課程のテーマの一つとしてFOPの病態解明という大きなテーマを頂き、研究をスタートいたしました。当初は、ピペットを握ったこともなく、新しいことばかり目まぐるしく降ってくるような日々でしたが、片桐先生や研究室の方々に親身にご指導を頂き、論文を発表することが出来ました。
 貴重な研究の機会を与えて頂き、熱心にご指導頂いた片桐岳信先生、明海大学須田直人教授、藤本舞先生をはじめ、多大なご協力を賜りました共著者の先生方、研究室の皆様にこの場を借りて心より感謝申し上げます(埼玉医科大学ゲノム医学研究センター・町谷 亜位子)