日本骨代謝学会

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NF-κB, p65サブユニットとSmad4 MH1領域の会合を阻害するペプチドはBMP2による骨形成を促進する

A peptide that blocks the interaction of NF-κB p65 subunit with Smad4 enhan ces BMP2-induced osteogenesis.
雑誌:J Cell Physiol. 2018 Sep;233(9):7356-7366.
  • 骨形成蛋白(BMP)
  • NF-κB
  • 骨芽細胞

自見 英治郎・浦田 真梨子

論文サマリー

 骨形成タンパク質(Bone Morphogenetic Protein:BMP)は、Smadシグナル伝達経路を介して培養骨芽細胞の分化を亢進するだけでなく、マウスやイヌに移植すると異所性骨を誘導する。しかし、ヒトへの臨床応用においては期待通りの骨再生効果は得られていない。これまで転写因子NF-κBの活性化が、BMP誘導性の骨芽細胞分化や骨形成を抑制することが知られており、NF-κBの選択的阻害剤はBMP誘導性の骨芽細胞分化や骨形成を促進する。しかし、NF-κBのメインサブユニットp65の遺伝子欠損マウスは胎生致死であることからNF-κBの選択的阻害剤の使用は注意しなければならない。我々はこれまでにp65の転写活性領域(Transactivation domain:TA)2がSmad4のMad homology domain (MH)1ドメインと相互作用してBMPシグナル伝達を阻害することを見出した。そこで本研究では、2つの分子の相互作用領域をアミノ酸レベルで同定し、さらにp65とSmad4の会合を阻害するペプチドを合成し、BMP2誘導生の骨形成への効果を検討した。まずp65のTA2領域およびSmad4のMH1領域のリコンビナントタンパク質を精製し、両者が直接会合することを確認した。次にTA2領域をさらに細かく分け、TA2の428-443番のアミノ酸領域がMH1 と会合することを確認し、この領域をSmad4 Binding Domain(SBD)と名付けた。さらに細胞透過性SBDペプチドを合成し、p65 TA2領域とSmad4 MH1領域の会合を阻害することを確認した。細胞透過性SBDペプチドはSmad1/5のリン酸化またはNF-κBシグナル伝達の活性化に影響をおよぼすことなく、Smad1/5の標的遺伝子のプロモーター領域への結合を増強することでBMP2誘導骨芽細胞分化および石灰化を促進した。SBDペプチドをBMP2と一緒にマウス背部筋膜下に移植すると誘導された異所性骨の大きさは殆ど変わらなかったが、皮質骨の厚みや骨密度を有意に増強した。以上の結果より、SBDペプチドは、NF-κBの活性化を阻害することなくBMP2誘導性の骨再生に有用であることが示唆された。(九州大学歯学研究院 自見 英治郎)

 

自見 英治郎・浦田 真梨子
 SBDペプチドのコンセプトと骨形成への応用

著者コメント

 BMPによる骨形成促進は骨量減少に対する治療薬の選択肢としてその効果が期待されていますが、臨床では未だ十分な効果が得られていません。その解決策の一つとして、BMPシグナルとNF-κBシグナルのクロストークからペプチドを開発し、その効果を検証するというこのテーマは多くの先生方の研究の積み重ねにより得られたものであり私にとって非常に大きなものでした。得られた一つの結果から次にどう繋げるか失敗から何を学べるかを繰り返し、基礎研究の大変さ楽しさを学ぶことが出来ました。実験が上手くいかず非常に苦労した時期が多くありましたが、自見先生や研究室・臨床の先生方に励まされ最後まで諦めずに研究を続け一つの形にすることが出来ました。この研究に携わって頂きました多くの先生方に感謝申し上げます。(九州歯科大学・浦田 真梨子)