日本骨代謝学会

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TOP > 1st Author > 宮内 芳輝

閉経後骨粗鬆症におけるエストロゲン欠乏による破骨細胞の活性化にHIF1αは必須である

HIF1α is required for osteoclast activation by estrogen deficiency in postmenopausal osteoporosis.
著者:Miyauchi Y, Sato Y, Kobayashi T, Yoshida S, Mori T, Kanagawa H, Katsuyama E, Fujie A, Hao W, Miyamoto K, Tando T, Morioka H, Matsumoto M, Chambon P, Johnson RS, Kato S, Toyama Y, Miyamoto T.
雑誌:Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Oct 8;110(41):16568-73.
  • 破骨細胞
  • エストロゲン
  • HIF-1α

佐藤 真理

論文サマリー

骨量の制御は骨形成と骨吸収のバランスの上に成り立っており、その破綻は種々の疾患の要因となることから、骨形成や骨吸収に影響を与える分子や環境因子について多くの知見が蓄積されてきた。閉経後の女性にしばしば発症する骨粗鬆症はこのバランスの破綻による代表的な疾患であり、齧歯類でも卵巣摘除術(Ovx)によって骨粗鬆症様の表現型を惹起することができる。また近年報告された破骨細胞特異的エストロゲン受容体α欠損マウス(ERα cKO)では、Ovxの施術なしでも骨吸収の亢進による骨量低下を来すことから、エストロゲンは破骨細胞のエストロゲン受容体を介して骨吸収を抑制していると考えられる。他方、成長板軟骨やその下部の骨梁は低酸素環境下にあり、低酸素応答性転写因子であるHIF-1αが内因性に軟骨細胞や骨芽細胞の分化や機能に関与していることが示されているが、HIF-1αの破骨細胞における機能については明らかではなかった。HIF-1α、エストロゲンおよび破骨細胞の関係についてin vitroで検討したところ、成熟破骨細胞ではHIF-1α mRNAが高発現している一方で、エストロゲンにより低酸素条件下のHIF-1α蛋白質は著減することが明らかになった。またマウスの骨組織解析により、Ovxは低酸素環境に影響することなくHIF-1α陽性細胞を増加させること、さらに破骨細胞特異的HIF-1α欠損マウス(HIF-1α cKO)ではOvxによる骨量低下が阻害されることが明らかになり、エストロゲン欠乏はHIF-1αを介して骨吸収亢進をもたらしている可能性が考えられた。そこでERα cKOとHIF-1α cKOを交配してERα / HIF-1α cKO(WcKO)を作製し骨組織を解析したところ、ERα cKOが示す骨粗鬆症様の表現型がWcKOでは回復することが明らかになった。またHIF-1α阻害剤である2-methoxyestradiol (2ME2)をOvxマウスに投与したところ、骨吸収を抑制し骨量を増加させる効果があることが認められた。以上の結果は、破骨細胞において通常エストロゲンはERαを介した何らかの機構によりHIF-1α蛋白質を減少させているが、閉経等によるエストロゲン欠乏がHIF-1α蛋白質の増加および機能発現を通じて骨吸収を亢進させるという、新たな機序の存在を示した。特にHIF-1αのホルモンによる制御は本研究で新たに示されたもので、その分子機構の解明が今後の課題となるものと思われる。

著者コメント

このテーマは、宮本ラボでポスドクをすることになった時最初に提示されたもので、宮本先生の果てしなく広がる研究構想に、これはえらい仕事を任されてしまったと思ったものです。低酸素培養やマウスの作製など多くのハードルに阻まれ、ラボの他のテーマにもどんどん追い越されて何度も店じまいの危機に陥りましたが、宮本先生の根気強いご指導とラボメンバーのサポートをいただき、何とか論文にまとめることができて正直ほっとしています。ただ今後の課題という書き方をしていますが、もっとメカニズムを議論できる生化学的なデータをきちんと詰めていきたかったという、自分としては少し悔いの残る仕事にもなりました。これら二つの意味で、自分にとって非常に思い入れのある論文です。(慶應義塾大学医学部整形外科・宮内 芳輝)

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