日本骨代謝学会

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ゾレドロン酸年1回投与は、日本人骨粗鬆症患者の大腿骨構造特性および骨力学特性に効果を現した 〜CTを用いた骨ジオメトリー解析結果より〜

The effect of once-yearly zoledronic acid on hip structural and biomechanical properties derived using computed tomography (CT) in Japanese women with osteoporosis.
著者:Ito M, Sone T, Shiraki M, Tanaka S, Irie C, Ota Y, Nakamura T
雑誌:Bone. 2018 Jan;106:179-186. doi: 10.1016/j.bone.2017.10.013. Epub 2017 Oct 12.
  • ゾレドロン酸
  • CT解析
  • 大腿骨ジオメトリー

伊東 昌子

論文サマリー

 日本人骨粗鬆症患者を対象に、コンピュータ断層撮影(CT)を用いて、大腿骨近位部ジオメトリーおよび骨力学特性に及ぼすゾレドロン酸の影響を評価した。対象は、ゾレドロン酸第3相試験(ZONE試験)のうち、多列検出器CT(multi-detector low CT=MDCT)装置を保有する施設で情報を収集できた部分集団であり、原発性骨粗鬆症の診断基準(2000年)に基づく原発性骨粗鬆症と診断され、第4胸椎と第4腰椎との間に椎体骨折1〜4個を認める被験者であった。被験者は、すべて閉経後骨粗鬆症女性(ゾレドロン酸投与群49人、プラセボ投与群53人)であり、ゾレドロン酸5mgまたはプラセボの1年1回の静脈内投与にて2年間治療を行った。大腿骨近位部CTデータは、ベースライン時および投与開始12か月および24か月後に収集し、市販ソフトウェアであるQCT PRO(Mindways社製)を用いて、盲検下で解析した。

 以下に結果を述べる。ゾレドロン酸投与により、プラセボ群と比較して、皮質骨幅・皮質骨面積・全骨面積は、頸部・転子間部・骨幹部で有意に高値を示し、皮質骨密度は頸部と骨幹部で、また全骨密度は3部位いずれでも有意に高値を示した。骨力学特性を表す指標のうち、曲げ強度を表すsection modulus (SM)は3部位いずれでも有意に高値を示し、皮質骨不安定性を表すbuckling ratio (BR)は転子間部と骨幹部で有意に低値を示した。ゾレドロン酸投与後の変化を、バースラインと比較すると、頸部では皮質骨幅の有意な増加、皮質骨密度と全骨密度の有意の増加、BRの有意の低下を示し、転子間部においては皮質骨幅・皮質骨面積・全骨面積の増加、全骨密度の増加、SMの増加とBRの低下を認め、骨幹部においては皮質骨幅・皮質骨面積・全骨面積の増加、皮質骨密度・全骨密度の増加、SMの増加が認められた。

 本研究の結果から、ゾレドロン酸の年1回点滴静注は大腿骨頸部、転子間部、骨幹部において、骨密度増加、骨構造改善、骨強度増加効果が示された。

伊東 昌子

伊東 昌子

伊東 昌子

著者コメント

 CTは三次元データを収集し再構成することで、大腿骨近位部のような複雑な骨構造を可視化でき、さらに頸部軸や骨幹部軸などを基準にして、横断面の構造解析や骨力学特性を算出することができる。頸部骨折・転子部骨折リスクとしての骨構造特性の評価や、骨粗鬆症治療前後の変化を評価することで、非破壊的に骨構造と骨強度の変化を算出することができる。
 これまで、エルデカルシトールの効果をアルファカルシドールの効果と比較した試験、週一回投与テリパラチドの効果をプラセボ対象に評価した試験を、同じ解析法で行った。CT解析を駆使した過去の試験結果と今回の試験結果を比較検討することで、骨吸収抑制剤と骨形成促進剤のメカニズムを反映した効果発現の差異が示された。(長崎大学ダイバーシティ推進センター・伊東 昌子)