日本骨代謝学会

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TOP > 1st Author > 金沢 一平

雄マウスにおいて、骨芽細胞AMP-activated protein kinaseは出生後の骨格成長を制御する

Osteoblast AMP-activated protein kinase regulates postnatal skeletal development in male mice.
著者:Kanazawa I, Takeno A, Tanaka KI, Notsu M, Sugimoto T.
雑誌:Endocrinology. 2018 Feb 1;159(2):597-608. doi: 10.1210/en.2017-00357.
  • AMPK
  • 骨芽細胞
  • 骨リモデリング

金沢 一平

論文サマリー

 AMP activated protein kinase (AMPK)は細胞内エネルギーセンサーとして重要な役割を担っており、我々はこれまでに骨芽細胞分化におけるAMPKの重要性について報告してきた。骨芽細胞におけるAMPK活性化は分化、石灰化を促進するが、骨芽細胞AMPKのin vivoにおける役割については不明である。本研究ではAMPK α1 subunit floxedマウスとOsterix-Creマウスを用いて骨芽細胞特異的にAMPKをノックアウト (Ampkosb-/-)して骨構造解析を行うことにより、骨芽細胞AMPKのin vivoにおける役割について検討した。Ampkosb-/-マウスは生後から成長障害を認め、海綿骨・皮質骨ともに骨量が有意に低下していた。骨芽細胞数には有意な変化はなかったが、カルセイン二重ラベリングによる検討では皮質骨内膜面の骨形成が有意に低下していたことから、AMPK欠損による骨芽細胞機能の低下が示唆された。一方、破骨細胞は有意に増加していた。頭蓋骨、大腿骨から骨芽細胞、骨髄細胞を採取し、real-time PCRにて骨代謝関連遺伝子の発現を検討したところ、Runx2、Osterix、BMP-2などの骨形成関連因子は有意に低下し、ALP、osteocalcin、type 1 collagenの分化マーカーの発現も低下していた。一方、破骨細胞誘導因子であるRANKLは有意に上昇を認めた。Ampkosb-/-マウスでは骨芽細胞分化障害による骨形成低下とRANKL発現上昇による骨吸収誘導により骨量が低下することが示唆された。したがって、骨芽細胞AMPKは骨形成、骨リモデリングにおいて重要な因子であり、新たな骨粗鬆症治療標的因子である可能性が示唆された。

金沢 一平

著者コメント

 2005年から大学院生として研究をスタートした際、骨におけるAMPKの役割についての報告はまったくなかったため、骨芽細胞におけるAMPKの役割をテーマとして研究を始めました。MC3T3-E1やST2といった細胞株を用いたin vitroの実験で、AMPK活性化がメバロン酸経路阻害やMAPK系を介して骨芽細胞分化を促進することを報告しましたが、いつかはAMPKのin vivoでの役割を検討したいと思っていました。2009年から2012年までマギル大学へ留学し、別のプロジェクトでノックアウトマウス、トランスジェニックマウスを用いた研究をする機会を得ました(過去の1st Author記事に記事を掲載していただきました)。留学中はAMPKの研究から遠ざかっていましたが、帰国後から今回の研究を立案してようやくその結果を発表することができました。今回の知見を活かして、これからも新しい発見を求めて研究を進めていきたいと思っています。いつも暖かいご支援・ご指導をいただいている杉本利嗣教授と、一緒に研究を進めてくれている医局の先生たちに感謝の意を申し上げたいと思います。(島根大学医学部内科学講座内科学第一・金沢 一平)