日本骨代謝学会

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骨細胞は一次リンパ組織と脂質代謝を制御する

Osteocytes Regulate Primary Lymphoid Organs and Fat Metabolism.
著者:Sato M, Asada N, Kawano Y, Wakahashi K, Minagawa K, Kawano H, Sada A, Ikeda K, Matsui T, Katayama Y.
雑誌:Cell Metab. 2013 Oct 15. doi:pii: S1550-4131(13)00383-5.
  • 骨細胞
  • 胸腺
  • 脂肪

佐藤 真理

論文サマリー

骨の細胞の90%以上をも占める骨細胞は、重力や運動刺激を感知するメカノセンサーとして知られており、その骨細胞を大量に埋め込んだ骨は人体最大の感覚臓器としての側面を持つ。実際、尾部懸垂により重力負荷がかからなくなったマウスの後肢では、骨細胞同士が構成するネットワーク構造の乱れと骨量減少が観察される。興味深いことに、骨細胞が乱れたこの後肢の骨髄中ではBリンパ球数の減少が見られ、骨細胞が日々重力を感じることが骨髄造血に重要であることが示唆された。そこで我々は、DMP-1プロモーター下でジフテリア毒受容体を発現させたマウスに15週齢でジフテリア毒を投与することで、骨細胞だけにダメージを与えたマウス(Osteocyte-less mouse = OLマウス)を用いて全身造血への影響を解析した。OLマウスの骨髄中ではBリンパ球分化が著しく障害されていた。それは骨髄ストローマ細胞の分化異常により、Bリンパ球を特異的に支持するストローマ細胞が欠失するためであった。さらにOLマウスではTリンパ球分化の場である胸腺が激しく萎縮しており、胸腺皮質上皮細胞が構成する胸腺微小環境異常のためTリンパ球分化が障害されていた。野生型マウスとOLマウスを結合させ、野生型マウスから血中液性因子を持続的に供給させてもOLマウスの胸腺萎縮ならびにTリンパ球分化異常は防げなかったことから、骨細胞は遠隔臓器である胸腺の微小環境を液性因子を介さずに制御していることが示唆された。加えて、OLマウスでは脂質代謝異常も観察される。OLマウスの白色脂肪は全身で消失しており、それは摂食量減少、消化管異常およびカテコラミン過剰症や甲状腺機能亢進症といった内分泌異常によるものではなかった。我々は脳中枢の関与を疑い、脂質代謝制御に関連する部位である視床下部腹内側核(VMH)および弓状核(Arc)を破壊したところ、OLマウスの白色脂肪消失は防げなかったが、なぜか肝臓だけには著しく脂肪が蓄積して激烈な脂肪肝を呈した。脳を破壊したOLマウスの肝臓では脂肪排出に関連するMTPやApo Bといった遺伝子発現が減少しており、骨細胞は脳と協調して肝臓からの脂肪排出を制御していることが示唆された。本研究から、骨細胞は一次リンパ組織である骨髄と胸腺の造血微小環境を制御し、全身の脂質代謝に関しては、一部、脳と協調して制御することが明らかとなった。そしてこの制御機構にはホルモンやミネラルといった液性因子ではない未知の機構が関与している可能性が高い。本研究により、骨を頂点とした全身制御機構の存在が示唆された。

佐藤 真理

著者コメント

中身(骨髄)も含めて骨を丸ごと理解したい、との思いから神戸大学の血液内科にて骨の研究を行いました。その結果、体丸ごと、骨から理解することができました。底知れない骨の役割を眼前に突きつけられたものの、その制御機構は一切不明です。骨は私たちの想像をはるかに超える創造力で全身を制御するクリエイティブな臓器なのだと心底感じました。もっともっと骨のことを知りたいです。そして、本研究を遂行した約4年間、涙や怒り、喜び全てを一緒に飲み込み乗り越えてくれたチーム血内(in 神戸大)の皆さんに心から感謝します。皆さんがいなければ私は頑張れませんでした。(北海道大学・佐藤真理)

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