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テリパラチドの中止、継続、抗RANKL抗体への変更が海綿骨および皮質骨に与える効果についての比較

The effect of switching from teriparatide to anti-RANKL antibody on cancellous and cortical bone in ovariectomized mice.
著者:Omiya T, Hirose J, Hasegawa T, Amizuka N, Omata Y, Izawa N, Yasuda H, Kadono Y, Matsumoto M, Nakamura M, Miyamoto T, Tanaka S.
雑誌:Bone. 2017 Oct 25. pii: S8756-3282(17)30387-3
  • 破骨細胞
  • PTH
  • 抗RANKL抗体

大宮 俊宣

論文サマリー

 現在、PTH製剤の使用期間は最大24か月までと限定されており薬剤投与終了後骨量が減少することが知られている。本研究の目的はPTH投与を継続した場合と投与終了後に抗RANKL抗体へ変更した場合の骨組織所見の違いについて検討することである。

 マウスにおいて卵巣摘出手術(OVX)を行い骨粗鬆症モデルを作成し、PTHの使用継続、使用中止、PTHから抗RANKL抗体への変更が骨密度や海綿骨、皮質骨の骨組織に与える影響の違いについて検討した。

 まず12週齢のメスのC57BL/6マウスを用いてsham手術を行ったSHAM群、OVX後4週間からphosphate-buffered saline (PBS)を8週間投与継続するOVX群、OVX後4週間からPTHを4週間投与後PBSを4週間投与するPTH4W群、OVX後4週間からPTHを8週間継続するPTH8W群、そしてOVX後4週間からPTHを4週間投与後、抗RANKL抗体に変更するSWITCH群の5群を比較した。これら5群について骨密度を術前から4週毎に計測した。また術後12週(24週齢)の段階で脛骨、腰椎のマイクロCTを撮影し、さらに脛骨を用いて海綿骨形態計測を、大腿骨を用いて皮質骨形態計測を行った。

 骨密度はOVX後減少したが、PTH投与により上昇した。PTH8W群とSWITCH群ではSHAM群と同程度まで増加したが、PTHを中止したPTH4W群ではOVX群と同等のレベルまで減少した。マイクロCTの画像も同様にPTH4W群ではOVX群と同程度の海綿骨量であった。海面骨形態計測においてはSWITCH群で抗RANKL抗体により骨吸収が抑制された結果、骨リモデリングが抑制され骨形成も抑制されていた。皮質骨形態計測においては皮質骨内膜面でも同様に骨吸収、骨形成ともに抑制されていたが、皮質骨外膜面では骨形成の抑制はみられなかった。本研究の結果からPTHと抗RANKL抗体は同程度の骨密度増加効果があるが組織像は全く異なることがわかった。

 さらに、抗RANKL抗体使用により海綿骨においては骨形成が抑制されるにもかかわらず、マイクロCTで海綿骨量が増加している原因を明らかにするため抗RANKL投与後早期の骨組織について検討した。12週齢のメスのC57BL/6マウスにOVXを行い、その後4週で抗RANKL抗体を投与し投与前と投与後1~6日までの検体で骨形態計測を行った。その結果、抗RANKL抗体投与後3日で海綿骨の骨吸収は有意に抑制されほぼ0になるが骨形成は投与後6日の段階まで持続していることが分かった。電子顕微鏡所見も同様の結果であり、破骨細胞は抗RANKL抗体投与後2日で縮小し、ruffled border形成も抑制されていた。一方で骨芽細胞は投与前と投与後2日の間に変化はみられなかった。

 このような骨吸収と骨形成が抑制されるまでの期間に差がある、“window” がテリパラチド終了後に抗RANKL抗体に変更した後も海綿骨量が増大した原因となることが考えられた。これら皮質骨における外膜側の骨形成継続や海綿骨における骨吸収と骨形成の抑制されるまでの期間の“window” がFREEDOM延長試験にみられるようにヒトにおける抗RANKL抗体であるデノスマブの骨密度増加効果が10年間持続する原因になりうると考えられる。本研究の結果から抗RANKL抗体はPTH投与終了後に使用する薬剤として有用であることがわかった。

著者コメント

 今回の論文では、PTH投与中止と継続、抗RANKL抗体への変更が及ぼす影響の違いについて骨密度、マイクロCT、骨形態計測で評価し報告しています。実際に臨床で整形外科医として働いていた際には、術前や術後に骨粗鬆症治療薬を中止・変更するべきか、継続するべきか悩むことが多かったので、その際の方針決定の参考にもなる臨床に直結した研究ではないかと考えております。本研究では、PTH終了後の抗RANKL抗体の有用性や抗RANKL抗体投与後早期の効果について示すことが出来ました。今回、論文の形で発表することができて大変嬉しく思っております。今後は、さらに骨粗鬆症治療の治療戦略をたてる上で参考になるような各薬剤の使用順序や中止方法について検討していきたいと考えています。本研究において御指導頂きました廣瀬旬先生、宮本健史先生、田中栄先生にこの場を借りて御礼申し上げます。(東京大学医学研究科外科学専攻整形外科学・大宮 俊宣)