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骨粗鬆症治療開始時の患者背景とリセドロネートの治療効果との関係 –3つの国内第3相試験サブ解析–

Relationship between baseline characteristics and response to risedronate treatment for osteoporosis: data from three Japanese phase III trials.
著者:Mawatari T Muraoka R, Iwamoto Y
雑誌:Osteoporos Int. 2017 Apr;28(4):1279-1286.
  • リセドロネート
  • 高齢
  • ビタミンD欠乏

馬渡 太郎

論文サマリー

 リセドロネート(RIS)は、骨密度(BMD)を増加させ、骨折リスクを減少させる。しかし治療効果は、治療開始時の年齢、BMD、ビタミンD濃度のような患者特性に依存している可能性がある。本研究では、ビタミンD補充なしで行われたRISの国内第三相試験をサブ解析した。

 RIS国内第三相試験1447例(1日1回2.5mg錠;783例、週1回17.5mg錠;242例、月1回75mg錠;422例)を対象とした。治療開始時の年齢、BMD、血清25(OH)D濃度とRIS治療効果(BMDの変化と新規骨折抑制)の関係を検討した。結果、ビタミンDが欠乏とされる血清25(OH)D濃度が20ng/mL未満の患者は44.7%、充足されていると考えられる30ng/mL以上の患者は10.8%であった。BMD変化率は、baseline BMDでT-score ≧-2.5以上の症例より<-2.5の症例の方が有意(P=0.0003)に高かった。また、baseline 25(OH)D濃度が21ng/mL以上の症例より21ng/mL未満の症例の方が有意(P=0.0138)に低かった。RIS治療開始時の年齢の3分位値でサブグループ化しても、BMD変化率について有意な違いは見られなかった。新規骨折発生率は、endpoint BMDがT-score <-2.5の症例では1.5%で、T-score ≧-2.5の症例では0.8%であった。治療開始時のBMDが低くても、RIS治療によって増加する。しかし骨折予防という観点からは、早期からの治療開始がより効果的と思われた。日常臨床ではビタミンDは充足されていない場合が非常に多く、RISの治療効果は、 25(OH)D濃度が21ng/mL以上の場合より21ng/mL未満では小さいことから、ビタミンD補充の重要性が示唆された。

著者コメント

 骨粗鬆症治療薬を投与する場合の素朴な疑問、すなわち、目の前の患者さんが既にご高齢な時や、低骨密度である場合、さらにビタミンD不足な場合でも薬が効くのか?ということについて、リセドロネート国内第三相試験のデータを利用して解析させていただく貴重な機会を得ました。本論文を励みに、今後もリサーチマインドを持って、日常臨床に精進したいと考えております。本研究を後押しして下さった九州大学整形外科岩本幸英名誉教授をはじめ、支えてくださった同僚の先生方、ご指導・ご協力いただいた方々にこの場をおかりして厚く御礼申し上げます。(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 整形外科・馬渡 太郎)