日本骨代謝学会

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二次性副甲状腺機能亢進症と高リン血症を呈する late stage CKD モデルラットに対する骨粗鬆症治療薬の効果と安全性

Efficacy and safety of osteoporosis medications in a rat model of chronic kidney disease stage 4 accompanied secondary hyperparathyroidism and hyperphosphatemia
著者:M. Ota, M Takahata, T. Shimizu, Y. Kanehira, H. Kimura-Suda, Y. Kameda, H. Hamano, S. Hiratsuka, D. Sato, N. Iwasaki
雑誌:Osteoporosis International, 28(4), 1481-1490
  • CKD
  • 骨質
  • 二次性副甲状腺機能亢進症

太田 昌博

論文サマリー

 本研究では高齢者の多くが罹患する慢性腎臓病(CKD)によって発生する骨質異常の詳細と,実臨床では検証困難なステージ4以上のCKDに対するビスフォスフォネート(BP)および副甲状腺ホルモン(PTH)製剤テリパラチド(TPD)の治療効果と安全性についてラットモデルを用いて調査した.

 雄性SDラットに対し,8週齢から段階的に5/6腎摘を行い, CKDモデルを作成した.偽手術(Sham)群,CKD-vehicle群,CKD-ALN群,CKD-TPD群の4群にわけ,それぞれ24週齢からPBS 100μlまたはALN 50μg/kgまたはTPD 20μg/kg×2回を連日4週間皮下投与した.腎機能や電解質,intact-PTH,FGF-23濃度を縦断的に測定した.安楽死後に大腿骨を摘出し,マイクロCT解析,骨形態計測,赤外分光イメージングおよび力学試験に供した.

 CKDラットは骨脆弱性が問題となるステージ4に相当する腎障害を生じ,二次性副甲状腺機能亢進症( i-PTH増加)とリン代謝異常(FGF-23, P増加)を呈した.組織形態学的には高骨代謝回転となり,赤外分光法においても石灰化度,炭酸塩含有量の低下といった骨質異常を呈した(図).次にステージ4以上のCKDに対するALNとTPDの効果および副作用を検証した.ALN投与により骨代謝回転は抑制され,骨量と骨強度が増加傾向を示すとともに骨基質炭酸塩含有量が回復した(アシドーシス改善を示唆).ALN投与により腎機能は悪化せず,高リン血症が是正したことからALNはCKDステージ4でも安全かつ効果的に使用できる可能性が示唆された.一方,TPDにおいても腎機能やミネラル代謝に悪影響をおよぼすことなく二次性副甲状腺機能亢進症状態でもさらにアナボリックに作用し, 骨密度・骨強度を著増させた.

太田 昌博

著者コメント

 私は北海道大学整形外科に入局してから5年目で大学院に入り,骨代謝の研究を行うことになりました.このプロジェクトはモデル動物の作成に時間がかかることと,連日の薬剤投与など比較的手のかかる実験でしたが,研究グループの皆様のご助力もあって終了することができました.CKDについて知るほど,これまで骨にかかわる診療科に従事していながら生活習慣病と骨ということについてほとんど考えていなかったことを反省するとともに,今後の診療に直接的に活かせるテーマであって非常によかったと思っております.最後に、本研究にあたり、高畑雅彦先生をはじめご指導いただきました先生方と,FTIRで素晴らしい画像・データをご提供いただいた千歳科学技術大学の木村-須田廣美先生にこの場をお借りして深く感謝申し上げます.(北海道大学大学院医学研究院 専門医学系部門 機能再生医学分野 整形外科学教室・太田 昌博)