日本骨代謝学会

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TOP > 1st Author > 宮本 健史

閉経後女性の低骨密度者における血清メタボロームプロファイル

A serum metabolomics-based profile in low bone mineral density postmenopausal women.
著者:Miyamoto T, Hirayama A, Sato Y, Koboyashi T, Katsuyama E, Kanagawa H, Miyamoto H, Mori T, Yoshida S, Fujie A, Morita M, Watanabe R, Tando T, Miyamoto K, Tsuji T, Funayama A, Nakamura M, Matsumoto M, Soga T, Tomita M, Toyama Y.
雑誌:Bone. 2017 Feb;95:1-4. doi: 10.1016/j.bone.2016.10.027.
  • メタボローム
  • 骨粗鬆症

宮本 健史

論文サマリー

 骨粗鬆症は骨代謝の恒常性が破綻して発症する代表的疾患である。今日、骨折をエンドポイントとしたリスク評価を基に、骨折予防のための投薬基準が設定され、骨密度がyoung adult mean (YAM)値の70%あるいは-2.5SD以下に低下した場合や、椎体や大腿骨近位部骨折の骨折歴、などが投薬基準となっている。しかし、低骨密度や骨脆弱性骨折の既往は、代謝状態が破綻した状況が何年にも渡って継続した結果のものであり、現在の骨代謝状態を評価したものではない。Fracture risk assessment tool (FRAX)は骨密度の測定などなく骨折リスクを評価するもので、現在は投薬基準の1つにも作用されているが、投薬の有無や骨折リスクに影響する糖尿病等の罹病歴が結果に反映されないことや、実際に患者自身の骨密度や採血等を行っていないので、後進国等で汎用性はあるものの、個々の病態を評価していないことが課題であった。メタボロームはいわゆる”omics”研究の1つであり、代謝産物を網羅的に計測するものである。骨粗鬆症のような代謝性疾患の病態を評価するツールとしては、終末代謝産物を網羅的に計測する本方法がもっとも威力を発揮するものと考えられるが、他の”omics”研究に比べて、まだ手法的に新しいこともあり、コストが高く、まだ普及の程度が低いことなどから、代謝物を絞ったショットガン的な解析の報告はあるものの、網羅的な解析はないのが現状であった。今回はcapillary electrophoresis/mass spectrometryを用いた網羅的なメタボロームで閉経後女性において低骨密度群と正常骨密度群を比較することで、低骨密度群に特徴的な代謝産物のプロファイルを初めて紹介したものである。

著者コメント

 本研究は、研究立案から保健管理センターの方々との打ち合わせ、許可申請、倫理委員会申請、実際の現場での動線確認や、解析費用の確保など、論文になるまでに8年もかかってしまいました。慶應病院の職員健康診断受診者のうち、文書による同意がいただけた525名の方、また、健康診断で本研究を実施するために協力していただいた保健管理センターの先生方やスタッフの皆様、また、これだけの人数の同意を文書でいただくのに対象者への説明や同意依頼に携わってくれた大学院生や研究室スタッフの皆さん、メタボローム解析を実施してくださった先生方のご協力により成立しています。全ての関係者の方々に深く感謝します。もう一度はあまりやりたくない研究ですね。(慶應義塾大学医学部整形外科学・宮本 健史)