日本骨代謝学会

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可変型遺伝子トラップ法を用いた新規骨代謝関連遺伝子探索のための効率的なスクリーニングシステムの開発

Development of an efficient screening system to identify novel bone metabolism-related genes using the exchangeable gene trap mutagenesis mouse models.
著者:Kurogi S, Sekimoto T, Funamoto T, Ota T, Nakamura S, Nagai T, Nakahara M, Yoshinobu K, Araki K, Araki M, Chosa E.
雑誌:Sci Rep. 2017 Jan 20; 7: 40692.
  • 可変型遺伝子トラップ法
  • EGTCデータベース
  • 骨表現型スクリーニング

関本 朝久
左:筆頭著者(左)と私(右)。第32回日本骨代謝学会学術集会 優秀ポスター賞表彰式にて
右:第33回日本骨代謝学会学術集会 京王プラザホテルエントランスにて

論文サマリー

 ロコモティブシンドローム(運動器症候群:ロコモ)は本邦では現在4700万人以上の罹患が推定されており、超高齢社会が進むにつれてその数は増加の一途をたどると予想されている。その中で骨粗鬆症は1200万人を超え、健康寿命延伸の為にもその病因病態解明は急務となっている。ヒトゲノムプロジェクトの進展で、ヒトゲノムの構造解析は完了したが、ゲノムの塩基配列のみでは遺伝子機能に関する十分な情報は得られない。したがって、ポストゲノム時代になり個体レベルでの遺伝子機能解析に適した遺伝子改変マウスは益々その重要性を増している。我々は骨粗鬆症等のロコモの病因病態解析の為に、骨軟骨に異常を来たすノックアウトマウスライブラリーを構築している。本研究の目的は、新規骨代謝関連遺伝子群探索の為の効率的なスクリーニングシステムの開発である。

 現在、新規遺伝子の単離同定と同時に個体レベルでの機能解析が効率的に行える可変型遺伝子トラップ法を施行し、そのトラップクローンデータをEGTCデータベース(Database for the Exchangeable Gene Trap Clones; 図)に登録している。我々は現在まで単離した1278トラップESクローンの中から、まずEGTCを用いた1次スクリーニング(ESTプロファイル、X-gal染色、過去の報告、未知遺伝子のいずれかより選別)にて骨代謝において重要と考えられる新規52候補遺伝子を選別し、ホモ・ヘテロマウスを作製した。この1次スクリーンングの時点で、既にin vivoで多数の骨代謝に関する報告のある遺伝子は除外している。2次スクリーニングは成長曲線、生化学検査、μCT、骨形態計測、骨強度試験、骨X-gal染色による組織検査を実施した。その結果、Lbr、Nedd4、未知遺伝子等42ライン(80.8%)で骨形態計測または骨強度試験においてスクリーニング異常を認めた。1次スクリーニングではX-gal染色が有意差をもって最も効率的であった。

 近年CRISPR/Cas9システムの開発によりゲノム編集技術は大きく発展しているが、遺伝子トラップ技術の最大の利点は未知遺伝子の解析である。可変型遺伝子トラップマウスを用いた骨代謝に異常を来たす新規遺伝子群のスクリーニングは非常に効率的であり、本スクリーニングで異常を認めたマウスラインは骨代謝疾患における重要な遺伝子をトラップしている可能性が高いと考えられる。本研究により骨代謝異常モデルマウスライブラリーを拡充することが可能となり、これらのトラップマウスはバイオリソースとして様々な骨代謝研究での有効活用に寄与し、骨粗鬆症等のロコモの病因病態解明、さらには創薬、治療への貢献が期待できる。

関本 朝久
EGTCデータベースホームページ(http://egtc.jp

著者コメント

 これまでの研究は熊本大学遺伝発生医学研究施設発生遺伝部門(現、生命資源研究・支援センター)の山村研一教授、荒木正健准教授、荒木喜美教授および研究室の皆様に大変お世話になりました。私は大学院当時、分子生物学を何も知らない研修医だったのですが、山村先生は優しいお言葉で私を迎え入れて下さいました。今思えば、全く何もできない私を快く迎えて頂き、本当に心より感謝申し上げます。本研究の成果が、骨粗鬆症などのロコモティブシンドロームの病因病態解明そして創薬の一助になれば幸いです。本研究を遂行するに当たり、多大なご指導ご鞭撻を受け賜りました共著の先生方および研究室の皆様に深く感謝申し上げます。(宮崎大学医学部整形外科・関本 朝久)