日本骨代謝学会

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骨芽細胞時計システムによる骨吸収の制御

Bone resorption is regulated by circadian clock in osteoblasts.
著者:Takeshi Takarada, Cheng Xu, Hiroki Ochi, Ryota Nakazato, Daisuke Yamada, Saki Nakamura, Ayumi Kodama, Shigeki Shimba, Michihiro Mieda, Kazuya Fukasawa, Kakeru Ozaki, Takashi Iezaki, Koichi Fujikawa, Yukio Yoneda, Rika Numano, Akiko Hida, Hajime Tei, Shu Takeda, Eiichi Hinoi
雑誌:J Bone Miner Res. 2017 Apr;32(4):872-881.
  • clock genes
  • 骨芽細胞
  • RANKL

宝田 剛志

論文サマリー

 哺乳動物の日内リズム形成には、脳内視交叉上核に発現する時計遺伝子群、すなわちPeriod (Per)、Cryptochrome (Cry)、ClockおよびBmal1などが重要な役割を果たす。ClockとBma1はヘテロダイマーを形成して、種々の標的遺伝子プロモーター上に存在するE-box配列を介して転写を活性化するが、このClockとBmal1による転写活性化はPerやCryにより負に制御されるので、時計遺伝子群発現に関する負のフィードバックループが形成される。近年、これら時計遺伝子群が心臓や肺、肝臓、腎臓などにおいても日周発現することが報告され、時計遺伝子が時計中枢である視交叉上核だけでなく、末梢組織においても機能的に働く可能性が提唱されている。私達は以前に、骨組織にも時計遺伝子発現が認められ、それが24時間周期性の発現リズムを示すことを報告してきたが(Hinoi, Ueshima et al, JBC, 2006)、その生体での役割については不明であった。本研究は、骨組織での体内時計システムの役割を調べるために、Bmal1の各種遺伝子改変マウスを使用して解析したものである。Bmal1の全身欠損マウスでは、骨量が著明に減少しており、骨吸収指標が野生型マウスと比べ有意に上昇していた。骨芽細胞特異的なBmal1遺伝子欠損マウスとしてOsterix-Cre;Bmal1fl/flマウスを使用して解析した結果、Bmal1全身欠損マウスと同じく骨量の減少と骨吸収指標の増加が観察されたため、以降は骨芽細胞に発現する時計システムに注目することとした。骨芽細胞と破骨細胞との共培養実験にて、骨芽細胞側のBmal1を欠損させることで、破骨細胞分化・骨吸収活性が増加することが分かったため、時計遺伝子がRANKLの発現に影響を与える可能性を疑った。1α,25-dihydroxyvitamin D3 (1,25(OH2)D3)は骨芽細胞に作用することでRANKLの発現を増加させる働きを持つが、Bmal1欠損骨芽細胞では、1,25(OH2)D3誘導性のRANKL発現が、野生型骨芽細胞と比べて顕著に増大することを見出した。つまり、骨芽細胞時計システムは、RANKLの1,25(OH2)D3応答性を調節することで、骨吸収を制御する可能性が示唆された。

著者コメント

 骨代謝と時計遺伝子に関する研究は、私が修士一年生の時に、その時助手であった檜井栄一先生と4年生の上嶋太一さんとの間で始められました。お二人でLuciferase assayの系を立ち上げ、Per1 promoter活性に対するPTHの作用を調べられていたのが、つい最近のことのように思い出されます。檜井先生が留学された後でしょうか、薬学会のシンポジウムの折、榛葉繁樹先生がBmal1全身欠損マウスの糖代謝表現型に関する研究発表をなされていました。そのスライド1枚でBmal1欠損マウスのX線写真を示され一言、「こんなデータがあるけど、どなたか研究してみませんか?」。それを聞いた私が反射的に発表後の榛葉先生に名刺を渡したことが、この研究の始まりでした。その後の多数の方々の協力のおかげで論文発表できたことは言うまでもありません。この場をお借りして感謝申し上げます。(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科組織機能修復学分野・宝田 剛志)