日本骨代謝学会

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骨細胞のエストロゲン受容体αは雌マウスの海綿骨量を制御する

Estrogen receptor α in osteocytes regulates trabecular bone formation in female mice.
著者:Kondoh S, Inoue K, Igrashi K, Sugizaki, H, Shirode-Fukuda Y, Inoue E, Yu T, Takeuchi J, Kanno J, Bonewald L, Imai Y.
雑誌:Bone. 2014 Mar;60:68-77.
  • 骨細胞
  • ERα
  • 骨形成

今井 祐記

論文サマリー

閉経後骨粗鬆症の主な病態はエストロゲン欠乏による骨吸収の亢進による骨量減少である。エストロゲンによる骨防御作用は、下垂体や免疫系を介した間接的な作用と骨組織に存在する細胞種に対する直接的な作用の総和であると考えられる。直接的なエストロゲンの作用としては、我々および他のグループが独自に、破骨細胞に発現するエストロゲン受容体α(ERα)を介した破骨細胞自身の寿命調節であることを示してきたが、骨組織に存在する細胞のおよそ90%以上を占める骨細胞に対する作用は明らかとなっていなかった。そこで、骨細胞におけるERαの役割を明らかにするためにDmp1-Creを用いて骨細胞特異的ERα遺伝子欠損マウス(ERαΔOcy/ΔOcy)を作出・解析した。その結果、オスERαΔOcy/ΔOcyには骨量変化を認めなかったものの、メスでは、海綿骨量の減少を認めた。さらにメスERαΔOcy/ΔOcyは、卵巣摘出による骨量減少に抵抗性であり、尾部牽引による低荷重状態では皮質骨は骨量減少に抵抗性を示した。これらの結果から、骨細胞においてERαが、エストロゲンによる骨防御作用の一端を担い、かつメカニカルストレスを感受することが明らかとなった。この骨量減少の原因を明らかにするため、骨形態計測を行った。その結果、メスERαΔOcy/ΔOcyでは、骨芽細胞が担う骨形成の各種パラメータの減少による骨量減少を認めた。このことから、骨細胞におけるERαの機能は、骨芽細胞による骨形成の制御であり、骨細胞から骨芽細胞へ、分泌因子や接着分子を介した何らかのシグナルが加わっている事が推測された。そこで、Dmp1-GFPを利用し、コントロールおよびERαΔOcy/ΔOcyからFACSAriaにより骨細胞の単離を行い、GeneChip解析にて遺伝子発現プロファイルの比較を行った。その結果、ERαΔOcy/ΔOcyではWntシグナルを細胞外で阻害することが報告されているSostdc1(Sost domain containing protein 1)およびMdk(Midkine)の発現が亢進していることが明らかとなり、骨細胞におけるERαの役割の一部は、Wntシグナルを正に制御する事による海綿骨の骨量維持であることが明らかとなった。
本研究の成果から、エストロゲンによる骨量制御、中でも骨組織への直接的な作用の一端が明らかになった。これにより、閉経後骨粗鬆症の治療に応用されているSERMs(Selective Estrogen Receptor Modulators:選択的エストロゲン受容体作動薬)の作用メカニズムの理解に繋がると考えられる。

著者コメント

本研究は、我々は遂行した破骨細胞へのエストロゲン作用機序解明研究ではなし得なかった部分を、東京大学分生研に所属していた大学院生である金藤紫乃さん(写真)が、遂行した成果です。当時、研究室には骨細胞に対するノウハウがなかったため、彼女は単身、米国カンザスのLynda Bonewald先生のもとを訪れ6ヶ月間の留学により蓄積した経験を活かして研究を遂行してくれました。論文の投稿は、卒業後となったため、ラボメンバーの多くが追加実験を行って下さいました。投稿中、マウスのgenetic backgroundが異なるものの、本研究と同様にDmp1-CreとERαfloxマウスとの交配により得られた骨細胞特異的ERαKOマウスが、メスには表現型がなく、オスでのみ骨量減少を来すことがPNASに発表されたことから、論文受理まで様々な難関がありました。共著者の皆様をはじめ多くの方々のサポートに、心より感謝いたしております。(愛媛大学・今井 祐記)

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