関節リウマチ患者における制御性T細胞動態についてメタ解析を用いた検討
著者: | Morita T, Shima Y, Wing JB, Sakaguchi S, Ogata A, Kumanogoh A |
---|---|
雑誌: | PLoS One 2016 Sep 13;11(9):e0162306 |
- 関節リウマチ
- 制御性T細胞
左より緒方先生、熊ノ郷先生、森田、嶋先生
論文サマリー
関節リウマチ(RA)は関節滑膜炎を主病態とする自己免疫性慢性炎症性疾患である。その病因は十分解明されていないが、Th17細胞を中心とした自己反応性T細胞の活性化とそれに伴うTNF-αやIL-6などの炎症性サイトカインの産生亢進が病態形成に関与していると考えられている。一方生体内において、自己反応性T細胞を抑制する機構として制御性T細胞(Treg)の存在が知られており、Tregの機能低下がRA病態に関与している可能性が指摘されてきた(図1)。
しかし、過去の研究においてRA患者のTregの抑制機能や割合に関して一定の結論が得られていない。そこで、RA患者におけるTregの割合を評価する目的で、過去にRA患者の末梢血中Tregの割合を評価した文献を集め、システマティックレビューとメタ解析を行い、RA病態におけるTreg動態を検討した。
まずRA患者の末梢血中Tregの割合を評価した文献をPubMedとGoogle Scholarにて検索し、メタ解析に必要なデータが記載されている文献を選別した結果、31文献を得ることができた。この31文献すべてのデータを用いてメタ解析を実施した場合、Tregの割合はRA患者とコントロール群で差が認められなかった。そこで、Tregの定義に基づいてサブ解析を実施した結果、CD25単独陽性の定義ではTregの割合に差が認められなかったが、CD25+Foxp3+やCD25-highで定義されたTregの割合はRA患者で低下していることが認められた(図2)。
さらに、CD25+Foxp3+ で定義された末梢血中Tregの割合は低疾患活動性のRA患者と比べ高疾患活動性のRA患者で低下している可能性が示唆され、またRA患者の滑液中Tregの割合は末梢血と比較して増加している可能性が示唆された。
近年、CD25+Foxp3+で定義されるTregの中でさらにCD45RAという活性化マーカーを用いることで、CD45RA+Foxp3(CD25)lowのナイーブTregとCD45RA-Foxp3(CD25)highのエフェクターTregに分類できることが報告されており、抑制機能が最も強いエフェクターTregの割合や機能を評価することが重要と考えられる。本研究ではRA患者末梢血中のCD25highで定義されたTregの割合が低下していたことから、RA患者ではエフェクターTregの割合が低下している可能性が示唆された。
著者コメント
私は、熊ノ郷先生の研究室から制御性T細胞(Treg)を発見された坂口志文先生の研究室に派遣させていただき、そこでTregに関する研究をさせていただいております。その中でリウマチ臨床医やTreg研究者の中でもリウマチ患者のTreg動態について十分理解されていない状況に気づき、緒方先生をはじめとした多くの先生方のサポートを受けて本研究をさせていただきました。メタ解析は臨床データや臨床試験の結果を用いて治療効果やリスク因子を評価することが多いですが、今回基礎研究のデータを用いたメタ解析に挑戦致しました。今後もメタ解析手法を用いて臨床と基礎のデータを結びつけることができるような研究を続けたいと考えております。この場をおかり致しまして、研究にご尽力いただきました多くの皆様に深くお礼申し上げます。(大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・免疫アレルギー内科学・森田 貴義)