日本骨代謝学会

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骨再生のための二層細胞転写法

Double-layered cell transfer technology for bone regeneration
著者:Keiko Akazawa, Kengo Iwasaki, Mizuki Nagata, Naoki Yokoyama, Hirohito Ayame, Kazumasa Yamaki, Yuichi Tanaka, Izumi Honda, Chikako Morioka, Tsuyoshi Kimura, Motohiro Komaki, Akio Kishida, Yuichi Izumi & Ikuo Morita
雑誌:Sci Rep. 2016 Sep 14;6:33286.

赤澤 惠子

論文サマリー

 近年、組織工学的技術の発展により、培養細胞の移植による組織再生が提唱されるようになりました。我々は、紙の表面に文字を印刷するかのように、移植用担体表面に培養細胞を転写する「細胞転写技術」を開発した。これまで本技術を用いて単一の細胞種を移植し、虚血、骨欠損、歯周組織欠損などに対して治療効果がある事を明らかとしてきた。さらに、本研究は、細胞転写技術が二種類の細胞の転写への応用が可能であるかどうかを検討することを目的とした。

赤澤 惠子
細胞転写技術の概要

赤澤 惠子
二層転写法による二種類の層状細胞の転写

 細胞をパターン状に転写した場合、同一部位に二回の細胞転写を繰り返す事により二種類の細胞転写が可能であった。しかし、層状の細胞を転写した場合、二回転写は失敗した。層状の細胞の転写は、転写基板上で二種類の細胞をあらかじめ層状に培養し一回の転写操作で転写した場合にのみ成功した(二層転写)。この二層転写法では歯根膜幹細胞、骨芽細胞、血管内皮細胞および線維芽細胞の様々な組み合わせにおいて二層転写が可能であった。また、二層転写後に羊膜へ折り畳みやトリミングなどの変形を加えた所、細胞は安定して膜上に維持された。歯根膜幹細胞と骨芽細胞の二層転写羊膜を骨欠損に移植した結果、単層の細胞移植と比較して有意な骨形成の促進が見られた。

 本研究は、細胞転写技術によって二種類の細胞を有する細胞移植材料の作製が可能であることを示し、さらに歯根膜幹細胞/骨芽細胞転写羊膜が骨再生を増強することを明らかとした。細胞転写技術は二種類の細胞を用いた新たな細胞移植法を可能とし、新規再生医療の開発に応用可能であると考えられる。

著者コメント

 我々の研究グループは、これまでの研究で、細胞転写による単層での細胞移植により、組織再生が促進されることを報告してきました。本研究は、さらに、それらと比較し、多くの組織再生が期待できる新しい方法を検討するために行いました。この技術を用いることにより、生体内などで複数の細胞種が存在し、構成されている部分の欠損部に二層転写羊膜を移植することが可能になり、移植先の細胞の構造に近い状態での細胞移植ができ、今後の再生医療の進歩に大きく貢献することが期待されます。
 私は、東京医科歯科大学 歯周病学分野に入局後、本研究を始めました。研究について、素人であった私は、大学院 博士課程での指導教官であった岩崎剣吾講師に細胞培養の一から様々なことを教えていただきました。研究は、色々と難しいことも多く、上手くいかないデータも積み重ねることによって、新たな局面が生み出されます。日々、地道にひとつずつ諦めることなく積み重ねることを私は本研究から学びました。これからも、本研究での経験を活かし、組織再生治療の開発に向けて、日々精進して参りたいと思っております。また、私がこの論文を発表できたのは、東京医科歯科大学 森田育男理事、和泉雄一教授、岩崎剣吾講師を始め、多くの先生方のご指導のもと、日々、研究を重ね続ける事ができたおかげです。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 歯周病学分野・赤澤 惠子)