C型ナトリウム利尿ペプチドはマウスにおいてグルココルチコイドによる骨伸長障害を改善する
著者: | Ueda Y, Yasoda A, Yamashita Y, Kanai Y, Hirota K, Yamauchi I, Kondo E, Ueda-Sakane Y, Yamanaka S, Nakao K, Fujii T, Inagaki N. |
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雑誌: | Bone. 2016 Nov;92:157-167. |
- CNP
- グルココルチコイド
- 成長障害
論文サマリー
小児においてグルココルチコイド(GC)の長期投与は低身長の原因となるが、この低身長はGH抵抗性で有効な治療法が確立されていない。また、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)は軟骨無形成症による低身長を改善することが知られているが、他の低身長への有効性については明らかでない。我々は、CNPの骨伸長促進効果がGCによる低身長を改善する可能性について検討した。
CNP投与モデルとして、生下時より肝臓でCNPを過剰発現し血中CNP濃度が上昇するトランスジェニックマウス(Tg)を使用した。野生型マウス(WT)とTgに対して、それぞれ生理食塩水またはデキサメタゾン(DEX)を皮下投与し、WT/vehicle群、WT/DEX群CNP/vehicle群、CNP/DEX群とした。投与終了時、吻臀長はWT/DEX群でWT/vehicle群と比較して有意に減少し、CNP/DEX群では生食群と同等となった(図1)。
in vivo における S1PR2 シグナルの影響
橈骨、脛骨などの長管骨および椎骨は、WT/DEX群でWT/vehicle群と比較して有意に短縮したが、CNP/DEX群ではWT/vehicle群とほぼ同じ長さとなった。脛骨成長板の組織学的解析において、WT/DEX群の成長板は、特に肥大化軟骨細胞層で菲薄化が認められたが、CNP/DEX群では改善が見られ、WT/DEX群と比較して肥大化軟骨細胞の増大が認められた(図2)。
in vivo における S1PR2 シグナルの影響
また、WT/DEX群では成長板軟骨細胞の増殖が抑制されアポトーシスが増加したが、これらはCNP/DEX群でも改善しなかった。さらに、胎生16日のマウス脛骨の器官培養でも同様の結果を得た。一方、野生型ラットにおいて、DEX投与時に血中N端プロペプチド(NT-proCNP)が著明な低下を示した。
以上の結果から、CNPの血中濃度上昇がGCによる低身長を改善することが示唆された。哺乳類の骨伸長の様式である内軟骨性骨化では、肥大化軟骨細胞の増大が最も重要な因子の一つであると報告されており、GC投与下でCNPによる肥大化軟骨細胞の増大が認められたことから、CNPは肥大化軟骨細胞の増大を介してGCによる骨伸長障害を改善すると考えられる。本研究はCNPが軟骨無形成症以外の低身長に有効であることを示唆するものであり、他の様々な疾患による低身長に対してもCNPが有効である可能性が期待される。
著者コメント
CNPは血中半減期が数分と非常に短く、皮下投与でもneutral endopeptidaseにより速やかに分解されてしまうので、投与実験が難しいという背景があります。本研究では、CNP投与モデルとしてCNPの血中濃度が上昇するトランスジェニックマウスを使用することにより、グルココルチコイドによる低身長に対するCNPの有効性を示すことができました。これまでCNPの有効性は軟骨無形成症でしか示されていませんでしたが、CNPの成長障害改善作用は疾患特異的ではないことが本研究で示せたと思います。CNPのさらなる可能性について、今後も研究を続けていきたいと考えています。(京都大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科学・植田 洋平)