日本骨代謝学会

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TOP > 1st Author > 深澤 和也

ATF3は破骨前駆細胞の増殖や骨リモデリングを調節する

ATF3 controls proliferation of osteoclast precursor and bone remodeling.
著者:Fukasawa K, Park G, Iezaki T, Horie T, Kanayama T, Ozaki K, Onishi Y, Takahata Y, Yoneda Y, Takarada T, Kitajima S, Vacher J, Hinoi E.
雑誌:Sci Rep. 2016 Aug 2;6:30918.
  • 破骨細胞
  • ATF3
  • 細胞増殖

深澤 和也

論文サマリー

 骨の恒常性は、骨吸収を担う破骨細胞と骨形成を担う骨芽細胞の絶妙なバランスが保たれることによって、維持されている。しかし、このバランスが崩れると、骨粗鬆症や大理石骨病などの代謝性骨疾患が引き起こされることが知られている。転写因子ATF3はATF/CREBファミリーに属し、種々の遺伝子のmRNA発現を調節することが報告されている。また、ATF3は、細胞の増殖や分化を制御する機能を持ち、癌や免疫疾患など、様々な疾患の発症に関与することも知られている。しかしながら、これまでに破骨細胞生成の異常に基づく骨疾患にATF3が関与するかどうかは検討されていない。今回、我々は、ATF3が病態時において、破骨細胞前駆細胞の増殖を制御することによって、骨吸収や骨リモデリングを調節することを見出した。破骨細胞前駆細胞特異的にATF3をノックアウトしたマウス (CD11b-Cre;ATF3fl/fl マウス)を解析したところ、骨量や破骨細胞のパラメーターに変化は認められなかったものの、RANKL誘導性の骨吸収に対して抵抗性を示すことが明らかとなった。また、in vitroの実験系において、ATF3欠損bone marrow macrophagesでは、RANKL誘導性の破骨細胞生成が抑制されることが示された。更にin vivoの実験系において、RANKL誘導性の骨髄中の破骨細胞前駆細胞の一時的な増殖亢進がATF3欠損マウスでは、抑制されることも明らかとなった。続く実験により、ATF3は破骨細胞前駆細胞内のAP-1依存的な転写を調節することにより、cyclin D1のmRNA発現を制御することが確認された。

 以上の結果から、破骨細胞前駆細胞において発現するATF3は、病態時において、その増殖を亢進させることで、骨吸収や骨リモデリングを制御することが明らかとなった。RANK-ATF3-cyclin D1経路が、破骨細胞前駆細胞の過剰な増殖に起因する代謝性骨疾患の治療標的となる可能性を期待する。

深澤 和也

深澤 和也

著者コメント

 私は研究室配属時より、檜井栄一先生の下で研究活動を実施し、破骨細胞におけるATF3の機能解析研究に携わってきました。in vivoで認められた表現型が、どのような分子機構で引き起こされているかを解明するうえで、多くの困難に直面しました。多くの先生方から御協力を頂き、この度、研究成果を発表することが出来ました。この場をお借りし、深く感謝申し上げます。(金沢大学医薬保健学総合研究科 薬理学研究室・深澤 和也)