日本骨代謝学会

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MMP-13はHDAC4欠損によって骨格に及ぼされる影響の重要なメディエータのひとつである

MMP-13 is one of the critical mediators of the effect of HDC4 deletion on the skelton
著者:Nakatani T, Chen T, Partridge NC.
雑誌:Bone 2016 June 90: 142-151.
  • Mmp13
  • Hdac4
  • Hdac4-/-/Mmp13-/-ダブルノックアウトマウス

仲谷 照代

論文サマリー

 Hdac4は軟骨細胞の肥大を調節している。Hdac4-/-マウスは非常に小さく、離乳期まで生存する事ができない。このようなでフェノタイプは、軟骨細胞の肥大化速度が促進される結果、不適切な軟骨の骨化(石灰化)が生じる事が主な原因である。以前我々の研究室において、Hdac4はMmp-13転写のリプレッサーである事、またHdac4欠損により、骨芽細胞 (in vitro)、肥大軟骨細胞、骨梁骨芽細胞 (in vivo)においてMmp-13発現が増加する事を報告した。MMP-13は軟骨内骨化や骨リモデリングに関与していると考えられている。Hdac4-/-マウスに見られるフェノタイプがMmp-13発現増加によるものか検討するため、Hdac4-/-/Mmp13-/-ダブルノックアウトマウスを作成し、Mmp-13を欠損させる事によりHdac4-/-マウスのフェノタイプをレスキューするか検討した。Mmp13-/-マウスは大きさに影響はなかった。Hdac4-/-/Mmp13-/-ダブルノックアウトマウスは、Hdac4-/-マウスに見られるフェノタイプ:体重、サイズ、生存率、又成長板(頸骨)の厚さがわずかであるが優位に回復した。Hdac4-/-/Mmp13-/-ダブルノックアウトマウスでは、アルカリフォスファターゼ(ALP)発現 (mRNA, タンパクレベル共)は回復したが、オステオカルシン(OCN)は回復しなかった。このことは、MMP-13が骨芽細胞分化の初期段階に影響を及ぼしている事を示唆した。活性化破骨細胞量(TRAP ポジティブ)に関しても回復が見られた。Mmp-9発現がMmp13-/-マウスで増加した。MMP-9はMmp13欠損を補っている事が示唆された。Hdac4-/-マウスにおいては、Mmp-9発現は減少するが、ダブルノックアウトマウスで増加した。μCT (頸骨)では、Hdac4-/-マウスでは皮質骨面、加えて皮質骨多効率が優位に減少した。骨梁に関しては、骨梁幅や骨密度が増加した。Hdac4-/-マウスからMmp-13を欠損させることにより、これらのパラメーターは回復、または正常化を見せた。以上の結果から、Hdac4-/-マウスに見られる未成熟なフェノタイプは、部分的にMMP-13増加によるものであること、又この酵素の過剰発現によるリモデリング障害によるものである事を明らかにした。これらのノックアウトマウスにおいて、Runx2発現には影響は見られなかったが、Mef2cの発現量がHdac4-/-マウスにおいて増加し、ダブルノックアウトマウスで正常化した。Mef2cは、軟骨の調節因子として必要である事、又SOST遺伝子発現に関与していることが報告されている。(今回、Hdac4-/-マウスにおいてSOST遺伝子量の変化は見られなかった。)Hdac4-/-マウスでのフェノタイプにMef2c増加が関与している事が示唆されたが、その詳細なメカニズムは明らかでない。最後に、Hdac4-/-/Mmp13-/-ダブルノックアウトマウス での回復は部分的なものであり、Hdac4-/-マウスに見られる未熟なフェノタイプには他のファクターの関与も考えられ、このメカニズムを解明するためにはさらなる研究が必要である。

仲谷 照代

著者コメント

Dr. Partridgeの研究室では、長年Mmp-13発現調節メカニズムについての研究を進めており、このプロジェクトもその一環です。以前我々の研究室から出された論文においてHdac4-/-マウスでMmp-13発現が増加することを報告しています。今回の論文ではHdac4-/-マウスからMmp-13を欠損させ、Hdac4-/-マウスのフェノタイプをレスキューするか検討しました。Mmp-13を欠損させる事により、わずかですが、有為にHdac4-/-マウスの未熟なフェノタイプをレスキューする事を見いだしました。Hdac4-/-マウスは生後間もなく死んでしまうので、サンプルを集めることが大変でした。体重のグラフを見せた段階で論文にするよう言われ、どのようなストーリーにすべきか、 試行錯誤しながら進めました。今回論文としてまとめる事ができ、Dr. Partridge、研究室のメンバー、そして他のラボの方々のご協力に心から感謝致します。(New York University College of Dentistry, Department of Basic Science & Craniofacial Biology・仲谷 照代)