日本骨代謝学会

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転写調節因子Ifrd1はNF-kB/NFATc1経路を介して破骨細胞の分化を制御する

The transcriptional modulator Ifrd1 regulates osteoclast differentiation through enhancing NF-κB/NFATc1 pathway.
著者:Iezaki T, Fukasawa K, Park G, Horie T, Kanayama T, Ozaki K, Onishi Y, Takahata Y, Nakamura Y, Takarada T, Yoneda Y, Nakamura T, Vacher J, Hinoi E.
雑誌:Mol Cell Biol. 2016 Sep 12;36(19):2451-63. doi: 10.1128/MCB.01075-15.
  • 破骨細胞
  • 転写因子
  • アセチル化

家崎 高志

論文サマリー

 骨の恒常性維持は破骨細胞の骨吸収と骨芽細胞の骨形成の協調的な作用によって維持されている。本研究では、転写調節因子Interferon-related developmental regulator 1 (Ifrd1)は破骨細胞に発現し、骨恒常性を制御する因子となることを明らかにした。前破骨細胞において、Ifrd1の発現はActivator protein-1 (AP-1)を介したReceptor activated nuclear factor-κB ligand (RANKL) により転写制御されている。骨形態計測による解析により、Ifrd1全身欠損マウス(Ifrd1-/-マウス)は野生型と比較して骨形成速度の増加と骨吸収の低下により骨量の増加が認められた。一方、破骨細胞特異的Ifrd1欠損マウス (Cd11b-Cre;Ifrd1fl/flマウス)は、通常の条件下においては骨量の変化は認められなかったのに対して、RANKL誘導性骨粗鬆症モデルに対して抵抗性を示した。マウス骨髄由来の破骨細胞培養系では、Ifrd1欠損細胞はRANKL誘導性の破骨細胞分化が減少していた。また、Ifrd1欠損は転写因子NF-κB構成タンパク質p65と脱アセチル化酵素HDAC1の相互作用の減弱を介して、p65のK122、K123残基のアセチル化を増強した。これはp65の核外への移行を促進し、破骨細胞分化に必須の転写因子であるNuclear factor of activated T-cell (Nfatc1)のNF-κB依存的な転写の抑制を介して、破骨細胞の分化を抑制した。これらの結果は、Ifrd1/NF-κB/NFATc1経路がin vivoにおける骨リモデリングに重要な役割を持ち、骨疾患における治療標的となることを示唆している。

家崎 高志

著者コメント

私は研究室配属時より檜井栄一先生の下で研究活動を実施させていただき、Ifrd1欠損マウスの研究の機会を与えていただきました。学部学生から大学院生までの5年間をこの研究に費やし、実際にIfrd1欠損マウスで骨量が増大している様子を見たときは、これまでの研究の流れが生体内でも行われているのだと感じ、研究の面白さを経験することができました。研究結果をまとめる際には多くの方々から協力を頂き、このような形で研究成果を発表することができました。今後も多くの方と協力して研究を行い、その研究が疾患の治療や予防に役立つことを期待しています。(金沢大学 薬理学研究室・家崎 高志)