日本骨代謝学会

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持続型PTHアナログ(LA-PTH)の副甲状腺機能低下症モデルラット及び正常サルにおける薬力学的効果

Pharmacodynamic Actions of a Long-Acting PTH Analog (LA-PTH) in Thyroparathyroidectomized (TPTX) Rats and Normal Monkeys.
著者:Shimizu M, Joyashiki E, Noda H, Watanabe T, Okazaki M, Nagayasu M, Adachi K, Tamura T, Potts JT Jr, Gardella TJ, Kawabe Y.
雑誌:J Bone Miner Res. 2016 Jul;31(7):1405-12. doi: 10.1002/jbmr.2811. Epub 2016 May 23.
  • 副甲状腺機能低下症
  • 持続型PTHアナログ
  • カルシウム代謝

清水 勝
向かって左から、城屋敷、清水、川邊、永易

論文サマリー

 副甲状腺機能低下症(Hypoparathyroidism:HP)は、内因性副甲状腺ホルモン(PTH)が欠乏して低カルシウム(Ca)血症を起こす病態であり、現在はCa製剤とビタミンD製剤が使用されております。また米国ではPTH(1-84)が新規治療薬として上市されました。しかしながら、いずれの治療もその効果は不十分であったり、高Ca尿症のリスクがあることが報告されております。
そこで我々は、持続型PTHアナログ(Long-Acting PTH:LA-PTH)のHPへの適応を検討するため、LA-PTHを副甲状腺機能低下症(Thyroparathyroidectomized:TPTX)ラット、及び正常サルに投与し、その血中Ca上昇作用を評価いたしました。
TPTXラットでは、LA-PTHの0.9 nmol/kgの静脈内投与により、血中Caはほぼ正常レベルまで上昇し、その効果は48時間まで持続しました。一方、PTH(1-34)とPTH(1-84)は、LA-PTHの約80倍の投与量でも、血中Caは弱く且つ一過性(6時間程度)の上昇に留まりました。また、LA-PTHを正常サルに単回皮下投与を行ったところ、LA-PTHは用量依存的に血中Caを上昇させその作用は最大72時間まで持続いたしました。
更に、TPTXラットにLA-PTHを28日間連日皮下投与したところ、1.8 nmol/kgの用量では血中Caをほぼ正常レベルに維持し、高Ca尿症や過剰な骨吸収マーカーの誘導は認められませんでした。
以上のことから、LA-PTHはHP治療の新たな選択肢となる可能性が示されました。

清水 勝
TPTXラットにおけるLA-PTHの4週間連日皮下投与による血清カルシウムに対する効果
平均値±標準誤差(n = 6、溶媒群、n=5)
*P < 0.05 溶媒投与群とLA-PTH群の比較、#P < 0.05 溶媒群とsham群との比較、+p<0.05 偽手術群とLA-PTH群の比較

清水 勝
正常カニクイザルにおけるLA-PTHの単回皮下投与による血清カルシウムに対する効果
平均値±標準誤差(n = 3)、*P < 0.05 溶媒投与群とLA-PTH群の比較

著者コメント

 本研究は、マサチューセッツ総合病院内分泌講座のPotts先生、Kronenberg先生との共同研究から生み出されました。PTH1型受容体の2つの活性化構造のうち、G蛋白結合型活性化構造(RG)及びG蛋白非結合型活性化構造(R0)へのPTHとPTHrPとの結合様式の違い(PTH:R0/RG結合型、PTHrP:RG結合型)と、PTHとPTHrPの薬理作用の違いに着目し、様々なPTH/PTHrPハイブリッドアナログを合成、その結合様式を検討いたしました。またTPTXラットと正常サルでの血中Ca上昇作用評価系を構築し、in vivoでの薬理作用を評価した結果、LA-PTHが創製されました。今後、LA-PTHが臨床現場においても、HP治療の新たな選択肢となることを期待しています。(中外製薬 創薬薬理研究部・清水 勝)