日本骨代謝学会

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原発性骨腫瘍における治療標的としてのRANKL関連分子の発現解析

Receptor-Activator of Nuclear KappaB Ligand Expression as a New Therapeutic Target in Primary Bone Tumors.
著者:Yamagishi T, Kawashima H, Ogose A, Ariizumi T, Sasaki T, Hatano H, Hotta T, Endo N.
雑誌:PLoS One. 2016 May 10;11(5):e0154680.
  • denosumab
  • RANKL
  • primary bone tumor

山岸 哲郎

論文サマリー

The receptor-activator of nuclear kappaB ligand (RANKL)は破骨細胞の分化、活性化を制御しており、骨代謝に重要な役割を担っている。RANKLは骨芽細胞が発現しているとされ、破骨細胞前駆細胞に発現しているRANKと結合することで破骨細胞の分化と骨吸収を促進する。denosumabはRANKLに対する完全ヒト型モノクローナル抗体で、RANKLと結合することで破骨細胞分化を抑制し、骨吸収を抑制する新規分子標的薬である。denosumabの適応症は多発性骨髄腫、転移性骨腫瘍および骨巨細胞腫であり、これらの溶骨性病変による骨関連事象への有効性が示されている。

ここで私たちは上記以外の原発性骨腫瘍においてもRANKLを発現している場合に効果があるのではないかと考えました。本研究ではdenosumabの新たな治療標的として様々な骨腫瘍のRANKL関連分子の発現を網羅的に解析した。

135例の骨腫瘍臨床検体についてreal-time RT-PCRを用いてRANKL,RANK,OPGのmRNA発現量を測定し、RANKLを発現しているとされる多発性骨髄腫細胞株であるRPMI-8226を基準として、相対定量値を算出した。OPGはRANKLのおとり受容体で、RANKL-RANK結合を阻害する。各組織型の中央値を比較し、さらには溶骨性病変の重症度指標として用いられるRANKL/OPGも算出して比較した。

すべての組織型の中で骨巨細胞腫のRANKL、RANKL/OPGが最も高値であった。

動脈瘤骨嚢腫、骨肉腫、軟骨肉腫、骨軟骨腫、内軟骨腫、線維性骨異形性でも高い発現量を認めており、これらの値は治療適応となっている多発性骨髄腫や転移性骨腫瘍と比較しても高値であった。

さらに64/135例については免疫組織化学的にRANKLタンパクの発現も検証した。骨巨細胞腫や線維性骨異型性においてはRANKL発現を認めたが、その他の組織においては発現を認めなかった。

本研究では骨巨細胞腫におけるRANKL発現、RANKL/OPGはもっとも高く、denosumabが効果的であることがわかります。多発性骨髄腫や転移性骨腫瘍のRANKL発現は骨巨細胞腫に比較してそれほど高値ではなかった。動脈瘤骨嚢腫、線維性骨異形成、軟骨肉腫においても多発性骨髄腫や転移性骨腫瘍よりも高い発現を認め、これらの腫瘍もdenosumabによる治療標的となる可能性がある。

著者コメント

新規分子標的薬のdenosumabは転移性骨腫瘍や骨巨細胞腫への有効性が示されてきていますが、他の原発性骨腫瘍への効果も期待できないだろうかと考え、本研究を開始しました。この研究では免疫組織化学でRANKLをタンパクレベルで検証する際に、条件設定が難しく、何度も試験を重ねました。症例数の少ない組織型もありますが、様々な組織型におけるRANKL発現を測定し、おおよその傾向を示すことができました。しかし、RANKLを発現する細胞や、その発現メカニズムにはまだまだ不明な点が多く、今後も研究を進めていきたいと思います。本研究にあたり、遠藤教授、川島先生をはじめご指導いただきました先生方に感謝申し上げます。(新潟大学医学部整形外科・山岸 哲郎)