日本骨代謝学会

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破骨細胞性顎骨破壊におけるソニックヘッジホッグの役割

The Role of Sonic Hedgehog Signaling in Osteoclastogenesis and Jaw Bone Destruction.
著者:Shimo T, Matsumoto K, Takabatake K, Aoyama E, Takebe Y, Ibaragi S, Okui T, Kurio N, Takada H, Obata K, Pang P, Iwamoto M, Nagatsuka H, Sasaki A.
雑誌:PLoS One. 2016 Mar 23;11(3):e0151731.
  • 癌骨破壊
  • 破骨細胞
  • ヘッジホッグ

志茂 剛

論文サマリー

 口腔扁平上皮癌はしばしば顎骨浸潤し,癌の顎骨骨髄への進展は予後と相関することが近年わかってきました。一方でソニックヘッジホッグ(SHH)ならびにそのシグナルの亢進はヒト腫瘍において認められ,転移,予後と相関しますが,SHHの口腔癌の顎骨破壊における役割はこれまで明らかになっておりませんでした。本研究でわれわれは,下顎歯肉癌顎骨破壊部におけるSHHの発現ならびにその役割を明らかにしました。

 当科で手術を行ないました下顎歯肉癌顎骨区域切除標本を調べますと,切除断端正常口腔扁平上皮細胞にSHH,Patched,Gli-2を認めませんが,癌へ移行するとそれらの発現が上昇します。癌顎骨破壊部において,SHHは癌細胞に強発現し,顎骨破壊部骨表面に存在する破骨細胞にもやや発現を認めます。一方でPatched,Gli-2は成熟破骨細胞ならびに前駆細胞に強く発現することから,癌細胞から産生されたSHHは直接的に前駆細胞ならびに成熟破骨細胞に影響していることが示唆されました。

 これまで我々は,SHHは骨芽細胞,骨髄間質細胞のRANKL発現を促進することで間接的に破骨細胞分化を促進することを報告してきましたが,前駆細胞ならびに成熟破骨細胞にRANKLと共存下で直接作用し,破骨細胞分化ならびに骨吸収を促進することが明らかとなりました。またSHHを前駆細胞にRANKL存在下で刺激するとERKならびにp38 MAPKのリン酸化,NFATc1が上昇することが明らかとなり,これらのシグナル分子がSHHの破骨細胞分化に関与することが示唆されました。

 SHHの破骨細胞分化にかかわる因子を調べるため。smoothenedアゴニストでRAW264.7細胞を刺激し,マイクロアレイを行い,パスウエイ解析を行うと,発現上昇を認める上位3つにG-protein-coupled receptor (GPCR)パスウエイが認められ,その中で最も発現が高い,non-odorant GPCRパスウエイ中のtachykinin receptor3の関与が示唆されました。

志茂 剛

志茂 剛

著者コメント

 2000-2002年ペンシルバニア大学留学中(Maurizio Pacifici教授ならびに小山英樹先生に師事)に骨および歯胚のDevelopmentにおけるヘッジホッグの研究に携わり,帰国後これまでの研究をいかに実際の臨床へ生かすにはと考えております。日々の臨床・教育の中で,研究を継続することの大変さを痛感し,あわせて他の研究者と連携する重要性を強く感じております。本研究におきましても国内外の研究機関との共同研究であり,ペンシルバニア大学の岩本容泰先生,岡山大学口腔病理学分野の長塚仁教授,歯学部先端領域研究センターの青山絵理子先生をはじめ,口腔顎顔面外科学分野医局員の先生がたに感謝申し上げます。(岡山大学大学院医歯学総合研究科口腔顎顔面外科学分野・志茂 剛)