日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

JP / EN
入会・変更手続
The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

Event/イベント情報

Book/関連書籍のご案内

member/会員ページ

1st Author

TOP > 1st Author > 井澤 俊

変形性顎関節症モデルマウスにおけるレバミピドの治療効果の検討

Rebamipide Attenuates Mandibular Condylar Degeneration in a Murine Model of TMJ-OA by Mediating a Chondroprotective Effect and by Downregulating RANKL-mediated Osteoclastogenesis.
著者:Izawa T, Mori H, Shinohara T, Mino-Oka A, Hutami IR, Iwasa A, Tanaka E.
雑誌:PLoS ONE 11(4), e0154107 (2016).
  • 変形性顎関節症
  • マウスモデル
  • レバミピド

井澤 俊
写真左より森浩喜先生、田中栄二教授、著者

論文サマリー

 変形性顎関節症(TMJ-OA)は進行性の軟骨変性疾患として知られているがその病因については不明な点が多い。レバミピドは胃粘膜防御因子増強型の胃炎・胃潰瘍治療薬であり、その作用機序としてラジカル阻害作用や抗炎症作用などが報告されている。今回、我々はTMJ-OAモデルマウスを用いて発症後の顎関節病変に対するレバミピドの治療効果について検討した。

 過開口によるTMJ-OAモデルマウスを用い0.6或いは6 mg/kgのレバミピド経口投与による下顎頭軟骨および破骨細胞への影響を非投与群と比較検討した。軟骨前駆細胞株ATDC5をレバミピドで処理後、IL-1β刺激を行いマトリックスメタロプロテナーゼの一つであるMMP-13の発現を分析した。さらにレバミピド処理が破骨細胞分化におよぼす影響について検索した。

 TMJ-OAモデルマウスでは下顎頭軟骨領域の減少および破骨細胞数の増加傾向を示し、これにレバミピドを0.6或いは6 mg/kgの用量で4週間経口投与した結果、下顎頭軟骨領域の回復および病的破骨細胞活性の減弱を認めた。また、IL-1β刺激によりATDC5ではMMP-13の発現上昇がみられたが、レバミピド添加によりその発現の低下を認めた。さらにレバミピド処理により破骨細胞の分化や細胞内シグナル伝達の抑制がみられた。以上の結果より、レバミピドはTMJ-OAの病態形成における軟骨細胞への保護作用および破骨細胞による病的骨吸収を抑制することで下顎頭の恒常性維持に効果がみられる可能性が示唆された。

井澤 俊

著者コメント

 レバミピドは胃炎・胃潰瘍治療薬としての粘膜保護作用の他に最近、OAや自己免疫疾患である関節リウマチやシェーグレン症候群に対しての抗炎症作用が報告されている薬剤です。今回、TMJ-OAモデルマウスを用い顎関節においてもレバミピドによるOA治療効果を明らかにすることができました。
 本研究を遂行するに当たり、数多くのご指導、ご鞭撻を受け賜りました田中 栄二教授をはじめ共著の先生方および研究室の皆様、原末提供いただきました大塚製薬の皆様に厚く御礼申し上げます。今後も矯正歯科医として臨床を常に意識しながら骨研究に邁進していきたいと思います。(徳島大学大学院 医歯薬学研究部 口腔顎顔面矯正学分野・井澤 俊)