
コラーゲン誘導マウス関節炎モデルにおけるRANKL結合ペプチドの関節および関節周囲の骨減少抑制効果:骨形態計測学的研究
著者: | Kato G, Shimizu Y, Arai Y, Suzuki N, Sugamori Y, Maeda M, Takahashi M, Tamura Y, Wakabayashi N, Murali R, Ono T, Ohya K, Mise-Omata S, Aoki K. |
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雑誌: | Arthritis Res Ther. 2015 Sep 12;17(1):251. doi: 10.1186/s13075-015-0753-8 |
- 関節リウマチ
- RANKL結合ペプチド
- 骨形成促進
論文サマリー
現在、関節リウマチの治療には炎症性サイトカインに対する抗体製剤など生物製剤が用いられているが、抗体製剤に比べて分子量が100分の1以下のペプチド製剤は、高分子製剤に比べて抗原抗体反応などの副作用が少なく、ターゲットに合わせた設計が可能であり、製造コストが比較的安いなど利点がある。
本論文では、関節リウマチモデルであるCIAモデルマウスを用いて、オステロプロテゲリン(OPG)の模倣ペプチドであるOP3-4ペプチド一剤で骨吸収抑制と骨形成促進の両薬理作用が得られることを示している。
まず、OP3-4は骨芽細胞分化を促進し、特に後期の骨芽細胞分化指標であるOsteocalcinの遺伝子発現を顕著に増加させることを示した(図1)。
In vivo実験では、X線学的解析および骨形態計測学的手法によりOP3-4が関節部および関節から離れた傍関節部においてもCIAモデルにおける骨量の低下を抑制することが示した(図2)。
CIAにより亢進した破骨細胞数の増加の抑制と骨芽細胞の石灰化能の亢進もOP3-4の作用として明らかになったことから、この関節部および傍関節部における骨量低下の抑制は、骨吸収抑制と骨形成促進の両作用の結果であることが示唆された。一方、OP3-4はCIAモデルで亢進する炎症に関しては抑制しないことも明らかにした。このことは、OP3-4の骨形成促進作用は炎症抑制によるものではないことを示している。
骨吸収抑制剤であるビスフォスホネートやOPGは、明らかな軟骨破壊抑制作用が認められないが、興味深いことに、OP3-4がCIAによる関節部の軟骨破壊を抑制する。OP3-4は、軟骨細胞の増殖と分化の両方を増加させるため、CIAモデルにおける軟骨破壊抑制作用は、OP3-4の直接作用である可能性を示した。OP3-4はOPGが結合するtumor necrosis factor-related apoptosis inducing ligand (TRAIL)には結合しないことが報告されており、OPGの模倣ペプチドとはいえ、OPGとは異なる薬理作用も示すことが明らかとなった。
これら一連の実験により、RANKL結合ペプチドであるOP3-4は、骨吸収抑制作用、骨形成促進作用、さらに軟骨破壊抑制作用の3つの作用を併せ持つことを見出した。
著者コメント
大学院生活足かけ5年間で学んだものは多く、特に自分の思いのままにならない研究に対して忍耐が必要であること、また自分の限界を超えたところに結果が待っていることを学びました。大谷名誉教授、青木准教授はじめ多くの先生方のご協力のもと、本論文を完成させることができました。特に、三瀬節子非常勤講師には大変お世話になり、心より感謝しております。(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 硬組織薬理学分野・加藤 玄樹)