日本骨代謝学会

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VI型とXII型コラーゲンは複合体を形成し、骨芽細胞間の相互作用を制御する

Collagens VI and XII form complexes mediating osteoblast interactions during osteogenesis
著者:Izu et al.
雑誌:Cell and Tissue Research, 2016 Jun;364(3):623-35. doi: 10.1007/s00441-015-2345-y. Epub 2016 Jan 12.
  • 骨芽細胞コミュニケーションネットワーク
  • VI型コラーゲン
  • XII型コラーゲン

伊豆 弥生

論文サマリー

 骨形成部位において、骨芽細胞は隣接する骨芽細胞と密に接し、細胞間コミュニケーションネットワークを構築している。私たちはこれまでに、FACIT(Fibril Associated Collagens with Triple Helices)に属するXII型コラーゲンが、ギャップ結合を介した骨芽細胞の細胞間コミュニケーションを制御し、これにより骨量および骨質制御に関与することを明らかにした(Izu et al. J Cell Biol. 2011)。さらに、FACITとは異なる構造を持つVI型コラーゲンもまた、骨芽細胞の形や細胞間結合を制御することで、骨量制御に寄与することを明らかにし(Izu et al. Tissue & Cell 2012)。加えて、興味深いことに、私たちは、VI型およびXII型コラーゲンが共に、筋・結合織疾患であるウルリッヒ病の原因遺伝子であることを見出した(Zou and Izu et al. Human Mol. Genet. 2014)。これらの知見から、異なる構造を持つVI型とXII型コラーゲンが、筋肉および結合組織の恒常性維持において共通した機能を担うことが推察された。そこで、本研究は、骨芽細胞の細胞間コミュニケーション構築時において、VIおよびXII型コラーゲンの役割を解明することを目的とした。

 新生仔マウスから単離した初代培養骨芽細胞を骨形成培地で培養し、細胞間結合が形成される時期においてVIおよびXII型コラーゲンの局在を解析した。細胞外に分泌されたVIおよびXII型コラーゲンは、骨芽細胞と骨芽細胞の間に局在し、細胞と細胞を結ぶマトリックスブリッジを形成した。また、このマトリックスブリッジにおいて、VIおよびXII型コラーゲンは共局在した。しかしながら、この時、骨の主要なコラーゲンであるI型コラーゲンは、細胞表面に局在し、マトリックスブリッジ形成に関与しなかった。さらに、Col6a1欠損およびCol12a1欠損マウスから得られた初代培養骨芽細胞を用いて解析したところ、いずれの欠損細胞においてもマトリックスブリッジ形成が障害された。このことから、両コラーゲンの存在がマトリックスブリッジ形成に不可欠であることが明らかとなった。以上の結果から、VIおよびXII型コラーゲンは協調的に働く機構を持つことが初めて明らかになった。また、骨芽細胞の細胞間コミュニケーション構築において、VIとXII型の両コラーゲンの存在が必須であることが明らかになった。

伊豆 弥生

著者コメント

 今回の論文は、私が日本獣医畜産大学博士課程に在籍していたころより興味を持っていたVI型コラーゲンと、2008年よりUniversity of South FloridaのDavid E. Birk先生の下で行ったXII型コラーゲンの研究を繋ぐ成果となり、大変嬉しく思っております。2016年より、アニマルサイエンス領域に戻ることになりましたので、コラーゲン研究を軸に、ヒトと動物を繋ぐトランスレーショナルな研究にも取り組んでいきたいと思います。本研究を遂行するに当たり、University of South FloridaのDavid E. Birk先生、東京医科歯科大学の野田政樹先生から多大なるご指導、ご支援頂きましたことを心より感謝を申し上げます。(千葉科学大学・伊豆 弥生)