日本骨代謝学会

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破骨細胞の骨吸収制御とシーリングゾーン形成は、プロテインキナーゼBを介した微小管安定性によって生じる

Regulation of bone resorption and sealing zone formation in osteoclasts occurs through protein kinase B-mediated microtubule stabilization.
著者:Matsumoto T, Nagase Y, Hirose J, Tokuyama N, Yasui T, Kadono Y, Ueki K, Kadowaki T, Nakamura K, Tanaka S.
雑誌:J Bone Miner Res. 2013 May;28(5):1191-202
  • 破骨細胞
  • 微小管
  • 骨吸収

松本 卓巳

論文サマリー

骨粗鬆症や関節リウマチなどの疾患は破骨細胞による骨吸収の亢進が病態であり、破骨細胞の骨吸収の制御メカニズムの解明が、これら疾患に対する治療戦略の構築には不可欠である。近年、破骨細胞におけるアクチン骨格の構成が微小管によってコントロールされることが明らかとなってきたが、破骨細胞における微小管制御メカニズムに関しては未解明の部分が大きい。本研究で我々は、プロテインキナーゼB (PKB/Akt) を中心とした破骨細胞の微小管骨格制御による骨吸収メカニズムを明らかにした。まず最初に、マウス骨髄細胞由来の破骨細胞を用い、Akt阻害剤やアデノウイルスを用いた遺伝子導入によってシグナル修飾を加え、in vitroの系において微小管の動態解析および微小管結合蛋白の解析を行った。破骨細胞へのAkt阻害剤の投与によってシーリングゾーン形成が阻害され骨吸収能が低下した。正常な微小管構造の破綻とともに、安定化微小管を反映するアセチル化微小管の減少が生じた。アデノウイルスを用いた遺伝子導入によるAktの恒常活性化では正反対の効果が得られた。Aktの恒常活性化によって、APC、EB1、dynactinなどの微小管関連蛋白の微小管結合が増加した。破骨細胞におけるAkt1およびAkt2の欠損は、APCとEB1の結合を分離し、シーリングゾーン形成の破綻と骨吸収能の低下をもたらすが、これらの変化はGSK-3β阻害剤であるLiClの添加によって回復した。続いて、破骨細胞特異的Akt1&Akt2ダブルノックアウトマウスを作成し、in vivoにおける成熟破骨細胞におけるAktの働きを解析した。破骨細胞特異的Akt1&Akt2ダブルノックアウトマウスは骨吸収低下型の骨硬化症を呈した。これらの結果から、破骨細胞においてAktが微小管関連蛋白の微小管結合を制御することによって、微小管の安定化をもたらし骨吸収能に関与することが明らかとなった。 破骨細胞は生体内で骨吸収を担う唯一の細胞であるが、骨吸収の際にみせるそのダイナミックな細胞骨格の再構成による形態変化は特異的なものである。本研究によって明らかとなったAktを中心とする破骨細胞における微小管構築の分子制御メカニズムの解明は、骨粗鬆症、関節リウマチ、癌の骨転移などの破骨細胞による骨吸収が関与する病態の解明、治療法への新しいアプローチの呈示に大きな意義を持つと考えられる。

松本 卓巳

著者コメント

私が破骨細胞の基礎研究を始めたのは、東大の整形外科学教室に入局して7年目のことでした。それまで臨床のみに携わってきた自分にとって、基礎研究は右も左もわからぬ状態でした。しかし田中教授、研究室メンバーのおかげで、破骨細胞研究の魅力にとりつかれるのに、さして時間はかかりませんでした。自然界の謎解きをするかのような仮説と実証の繰り返し、それを楽しみ、時に苦しみ、また時として生まれる予想外の発見に歓喜する。臨床の場では得ることのできない基礎研究の魅力を知ることができました。自由な発想、個人の興味を最大限に尊重しつつ適切な方向に導き、またサイエンスの楽しさを教えてくださった田中教授には、心より感謝しています。(東京大学・松本 卓巳)

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