
CCN4/WISP1が軟骨細胞分化を促進するメカニズムを解明
著者: | Yoshioka Y, Ono M, Maeda A, Kilts TM, Hara ES, Khattab H, Ueda J, Aoyama E, Oohashi T, Takigawa M, Young MF, Kuboki T. |
---|---|
雑誌: | Bone. 2016 Feb;83:162-70. doi: 10.1016/j.bone.2015.11.007. Epub 2015 Nov 10. |
- CCN4
- 軟骨細胞分化
- 関節軟骨
論文サマリー
4つの異なるモジュール構造を有する6つのタンパク質からなるCCNファミリーは,様々な組織に発現し,組織発生・恒常性維持に強く関与していることが報告されている.その中でも,CCN4/Wnt Induced secleted protein 1 (WISP1)は変形性関節症の関節軟骨において高発現することが報告されており,軟骨組織を構成する唯一の細胞である軟骨細胞に何らかの影響を与えている可能性が示唆される.そこで我々はCCN4/WISP1(以下,CCN4)に着目し,CCN4が軟骨細胞分化を正に制御すること,またその作用メカニズムを明らかにした.
実際,in vitroにおいてCCN4は,軟骨細胞分化誘導因子として知られるTGF-β3と同時に刺激することで,TGF-β3誘導性軟骨細胞分化を著明に促進することが明らかとなった.また,CCN4の作用機序をタンパクレベルで詳細に検討した結果,CCN4はTGF-β3の骨髄由来間葉系幹細胞表面への結合性を調節することで, smad2/3のリン酸化を活性化し,軟骨細胞分化を正に制御していることが明らかとなった.さらに,in vivoにおけるCCN4の役割を明らかにするため,Ccn4欠損マウスの膝関節に軟骨全層欠損を形成し,治癒に与える影響を検討した.その結果,野生型マウスと比較し,Ccn4欠損マウスにおいて実験的に形成した関節軟骨欠損の治癒遅延が生じることが明らかとなった(図).この結果は,CCN4が軟骨細胞分化を正に制御しているというin vitroの結果と一致しており,in vivoにおいてもCCN4が軟骨細胞分化において重要な機能を有していることが示唆された.
著者コメント
大学院入学直後に生化学分野の研究に興味をもち,本研究をスタートしました.指導教授である窪木拓男先生のご理解,温かいご指導のもと,大学院在学中に軟骨細胞分化制御メカニズムの一部を解明することを目標に,本研究に没頭することができ,大変有意義な時間を過ごすことができました.さらに幸運なことに,大学院生の間に2度も米国国立衛生研究所(NIH)に短期留学させて頂き,NIHのMarian Young先生の研究グループと共同研究を進め,in vivoにおける同遺伝子の役割を明らかにすることができました.この場をお借りし,様々な面でサポートしてくださった先生方に心から感謝申し上げます.今後は多面的な視点から研究に取り組み,軟骨細胞分化の謎の解明ならびに関節軟骨欠損の創傷治癒に関する研究に邁進したいと考えています.(岡山大学・吉岡 裕也)