日本骨代謝学会

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骨芽細胞に発現する転写調節因子Ifrd1は骨形成を抑制し骨吸収を促進させる

The Transcriptional Modulator Interferon-Related Developmental Regulator 1 in Osteoblasts Suppresses Bone Formation and Promotes Bone Resorption.
著者:Iezaki T, Onishi Y, Ozaki K, Fukasawa K, Takahata Y, Nakamura Y, Fujikawa K, Takarada T, Yoneda Y, Yamashita Y, Shioi G, Hinoi E.
雑誌:J Bone Miner Res. 2015 Sep 22. doi: 10.1002/jbmr.2720
  • 破骨細胞
  • 転写因子
  • アセチル化

家崎 高志

論文サマリー

骨の恒常性維持は破骨細胞の骨吸収と骨芽細胞の骨形成の協調的な作用によって維持されている。転写調節因子Interferon-related developmental regulator 1(Ifrd1)は種々の細胞でその機能的役割を確認されているが、骨の恒常性における役割は未だ明らかとなっていない。本研究でIfrd1は骨芽細胞自身の分化制御機構と骨芽細胞依存的な破骨細胞形成支持機構の両方の重要なメディエーターであることを明らかにした。骨形態計測による解析により、骨芽細胞特異的Ifrd1欠損マウス(α1(I)-collagen-Cre;Ifrd1 fl/flマウス)は野生型と比較して骨形成速度の増加と骨吸収の低下により骨量の増加が認められた。新生児マウス頭蓋骨由来の骨芽細胞培養系では、Ifrd1欠損細胞はRunx2、Osxの発現増加に伴って骨芽細胞の分化、成熟が増強された。また、Ifrd1欠損は転写因子NF-κB構成タンパク質p65と脱アセチル化酵素HDAC1の相互作用の減弱を介して、p65のK122、K123残基のアセチル化を増強した。これはp65の核外への移行とNF-κB依存的なSmad7の発現の減少、それに続くリン酸化Smad1/5/8依存的な転写の増強を起こし、骨芽細胞の分化を促進した。また、骨芽細胞特異的Ifrd1欠損による骨量増加はOsx fl/+の導入により顕著に回復したが、Runx2 fl/+では回復しなかった。一方、骨芽細胞と破骨細胞の共培養系実験により、Ifrd1欠損骨芽細胞はOpgの発現が高く、破骨細胞形成支持能力が低いことが明らかになった。Ifrd1の欠損はβ-cateninとHDAC1の相互作用の減弱を介して、β-cateninのK49残基のアセチル化を増強し、その核内蓄積とβ-catenin依存的なOpgの発現上昇を起こした。これらの結果をまとめると、骨芽細胞におけるIfrd1の発現は、NF-κB/Smad/Osx経路を調節することにより骨芽細胞分化を抑制し、β-catenin/OPG経路の制御により破骨細胞分化を活性化することが明らかとなった。これらの結果はin vivoにおけるIfrd1の発現は骨恒常性維持に重要な役割を持ち、骨疾患における治療標的となることを示唆している。

家崎 高志
家崎 高志

著者コメント

私は研究室配属時より檜井栄一先生の下で研究活動を実施させていただき、Ifrd1欠損マウスの研究の機会を与えていただきました。学部学生から大学院生までの5年間をこの研究に費やし、結果を出すことの難しさや、様々な観点から細胞内での分子機構を考えることに直面してきましたが、この研究を通じて檜井栄一先生をはじめとする研究室の皆様方にご協力をいただき、このような形で研究成果を発表することができました。今後も多くの方と協力して研究を行い、その研究が疾患の治療や予防に役立つことを期待しています。(金沢大学薬学部・家崎 高志)