日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

JP / EN
入会・変更手続
The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

Event/イベント情報

Book/関連書籍のご案内

member/会員ページ

1st Author

TOP > 1st Author > 坂井 貞興

イバンドロネートとエルデカルシトールの併用は単剤以上に骨形成を抑制することなく骨密度を増加させた

Treatment with the combination of ibandronate plus eldecalcitol has a synergistic effect on inhibition of bone resorption without suppressing bone formation in ovariectomized rats.
著者:Sakai S, Takeda S, Sugimoto M, Shimizu M, Shimonaka Y, Yogo K, Hashimoto J, Bauss F, Endo K.
雑誌:Bone. 2015 Aug 15;81:449-458.
  • 骨粗鬆症治療
  • ビスホスホネート
  • 活性型ビタミンD

坂井 貞興
向かって左から、遠藤、酒井。

論文サマリー

 骨粗鬆症治療ではビスホスホネート(BP)と活性型ビタミンDの併用療法は広く行われており、実臨床における効果も報告されています。この論文ではBP(イバンドロネート; IBN)と活性型ビタミンD(エルデカルシトール; ELD)併用による骨粗鬆症治療の効果を、卵巣摘除ラットを用いて検討しました。

8ヶ月齢ラットに卵巣摘除術を施し、手術の翌日からIBN (3 μg/kg、4週に1回、皮下投与(Sham群までBMDを増加させる用量)、ELD(15 ng/kg, 連日、経口投与(臨床投与量))または両剤の併用投与を12週にわたり行いました。併用群のBMDは腰椎、大腿骨ともに単剤群よりも高値でした。骨吸収パラメータ(尿中デオキシピリジノリン)は単剤群で低下し、併用群ではさらに低下しましたが、骨形成パラメータ(血中オステオカルシン)は単剤群と併用群の間に違いは見られませんでした。同様の傾向は骨形態計測によっても確認されました。これらのことからIBNとELDの併用投与による効果増強は、単剤投与以上に骨吸収を抑制する一方で、単剤投与と同程度の骨形成を維持することが機序の一つと考えられました。ELDは骨吸収とは独立した骨形成であるミニモデリングを増加させることが報告されていますが、我々はIBNとELDの併用投与における骨形成の維持にミニモデリングが関与していると考えました。実際、ミニモデリングによる骨形成は卵巣摘除による高骨代謝回転では増加しませんでしたが、ELD投与により増加しました。IBNとELDを併用してもELDで増加したミニモデリングに変化は見られませんでした。IBNをはじめとしたBP製剤は骨表面に吸着し、破骨細胞に取り込まれることで骨吸収抑制効果を発揮することが知られています。一方でELDは破骨細胞前駆細胞の局在制御、RANKL-RANKによる破骨細胞分化シグナルの抑制などが報告されています。両剤の併用は破骨細胞分化・骨吸収抑制の作用機序の違いとともに、ミニモデリングによる骨形成維持が合わさることで単剤以上の骨粗鬆症治療効果を発揮したものと考えられました。

坂井 貞興

著者コメント

骨粗鬆症の治療では多くの優れた骨吸収抑制剤が世にでています。一方で効果を高めるために骨吸収抑制効果を高めると骨形成も低下してしまうことが懸念されます。この論文でご紹介させていただいたラット骨粗鬆症モデルを用いたイバンドロネートとエルデカルシトールの併用では、骨代謝マーカーや骨形態計測の解析で骨吸収抑制に併用効果を示めしましたが、骨形成ではコントロール群レベルを維持し、単剤投与群と同程度でした。今後ミニモデリングによる骨形成の意義など、さらなる研究を進めると共に、イバンドロネートとエルデカルシトールの併用効果が臨床でも証明されることを期待しています。(中外製薬・坂井 貞興)