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TOP > 1st Author > 多田 昌弘

グルココルチコイド減量は関節リウマチ患者の血清オステオカルシン濃度を改善する
―TOMORROW研究からの結果―

Reducing glucocorticoid dosage improves serum osteocalcin in patients with rheumatoid arthritis-results from the TOMORROW study.
著者:Shiomi A, Tada M, Inui K, Sugioka Y, Mamoto K, Okano T, Koike T, Nakamura H.
雑誌:Osteoporos Int. 2015 Aug 21
  • 関節リウマチ
  • 骨代謝マーカー
  • グルココルチコイド

多田 昌弘
責任著者の小池先生(下段左)と筆頭著者の私(下段右)。上段は愉快なイケメン仲間達(左から岡野先生、真本先生、織田先生)。スクラムを組んで、関節リウマチ、骨粗鬆症を倒します!

論文サマリー

 2015年のリウマチ白書によると、関節リウマチ(RA)患者が報告する合併症として骨粗鬆症は47%に達している。RAでは、炎症性サイトカインによる傍関節性骨粗鬆症、廃用症候群にともなう全身性骨粗鬆症、ステロイド使用に伴うステロイド性骨粗鬆症、加齢による原発性骨粗鬆症と、骨代謝において不利な条件が重なっている。我々は、RA患者と健常者の混合コホートにおけるメタボリックシンドロームと骨粗鬆症の発症進展に関与する因子を同定し、予防法を提案することを目的としたTOMORROW研究を2010年から開始し、RAにおける骨粗鬆症の研究を行っている。

 健常者とRA患者の年齢、性をマッチングし、RAの男女比率・年齢分布に従い、患者および健常者をエントリーした。骨吸収マーカーとして尿中I型コラーゲン架橋N-テロペプチド(uNTx)を、骨形成マーカーとして血清オステオカルシン(OC)を評価し、1年間の経年的変化(ΔuNTxとΔOC)についてRA(202人)と健常者(202人)で比較を行った。また、RA患者において、ステロイド量の変化量(ΔPSL)、疾患活動性の変化量(Δdisease activity score [DAS]28-ESR)、骨粗鬆症改善薬使用の有無、生物学的製剤使用期間の4項目について、骨代謝マーカーに影響を与えるかどうかを単変量解析、多変量解析を用いて検討を行った。

 健常者とRA患者の背景を表に示す。RA患者のエントリー時の罹病期間は14.1±11.8年、生物学的製剤使用率は53.4%、骨粗鬆症改善薬使用率は31.6%であった。ΔuNTxはRA患者で-0.51±29.4 nmol、健常者で7.41±18.7 nmolと変化量に有意差を認めた(p=0.0013)。ΔOCはRA患者で0.94±2.47 ng/ml、健常者で0.37±1.62 ng/mlと両群で改善を認めたが、変化量はRA患者で有意に高値を示した(p=0.0065)。RA患者において、ΔPSLとΔOCには正の相関を認められた(r=0.265、p=0.02)。また、ΔuNTxとの間には、有意差はないものの負の相関があった(r=-0.153、p=0.19)。一方、ΔDAS28-ESRとΔOC、ΔuNTxには相関は認めなかった(図)。OC変化量に与える因子について重回帰分析を行ったところ、説明変数としてPSL変化量のみ(標準β値-0.229、P値0.001)が抽出され、DAS28-ESR変化量、骨粗鬆症改善薬使用の有無、生物学的製剤使用期間は抽出されなかった。

 RA患者において、ステロイドを減量することで、骨代謝マーカーが改善することが明らかになった。しかし、疾患活動性との相関は認められず、疾患のコントロールが良好でも、骨代謝マーカーが悪化する可能性が示唆された。ステロイドの減量が骨代謝マーカーの改善に重要である。

多田 昌弘
健常者およびRA患者背景

多田 昌弘

多田 昌弘

多田 昌弘

多田 昌弘

著者コメント

 RA患者に対する骨粗鬆症治療は、実臨床において十分とはいえません。また、生物学的製剤の登場で疾患活動性がコントロール可能になってきているものの、ステロイドを使用している患者はまだまだ多いのが現状です。本研究からRAの骨代謝において、ステロイドを減量することの重要性が明らかとなりました。TOMORROW研究を始めて、折り返しの5年が経過し,様々なデータが蓄積されています。今後更なるデータの解析を行い、RAと骨粗鬆症に関して重要な情報を発信していきたいと考えています。研究に参加して頂いているRA患者さん、健常ボランティアさん、スタッフの皆さん、RAグループの同僚(小池達也と愉快な仲間達)のおかげで研究成果を得ることができました。心より感謝いたします。(大阪市立総合医療センター整形外科・多田 昌弘)