
Obifはマウスの骨形成および精子形成に必要である
著者: | Mizuhashi K, Chaya T, Kanamoto T, Omori Y, Furukawa T. |
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雑誌: | PLoS One. 2015 Jul 24;10(7):e0133704 |
- Obif(Tmem119)
- 骨芽細胞
- 精子
論文サマリー
我々は以前の研究で、発生期のマウス骨芽細胞に高い発現を示すObif (Osteoblast induction factor, Tmem119)を同定し、ObifがMC3T3細胞の骨芽細胞への分化成熟を促進することを見いだした。Obifの生物学的な機能解析を行うためにObifコンベンショナルノックアウト(KO)マウスを作成して解析を行ったところ、Obifノックアウトマウスは野生型のコントロールマウスと比較して、大腿骨海綿骨の骨量、骨梁数が有意に減少し、骨梁間隔が有意に増加すること、さらに皮質骨の厚さも有意に減少することが明らかとなった。本研究では、Obif KOマウスの骨量減少を詳細に検討するために、骨形態計測法を用いて骨パラメータ解析を行った。骨吸収パラメータの中で、Obif KOマウスと野生型とを比較して有意な変化を示すものはなかった。しかし、骨形成および骨石灰化パラメータの中には、コントロールマウスと比較して有意に変化するものが認められた。Obif KOマウスは、コントロールマウスと比較して類骨幅(OV/OS)が有意に増加しており、骨石灰化速度(MAR)及び骨形成速度(BFR/BS)は有意に減少した。この結果から、Obif KOマウスの骨量減少は、骨芽細胞の異常によるものと推測された。またObif KOマウスではコントロールマウスと比較して、血清カルシウム値および血清ビタミンD値に関しては有意な差は認められなかった。以上の結果から、Obif KOマウスの骨量減少は、骨芽細胞の原発性の異常によることが示唆された。さらに我々は、Obif KO成熟雄マウスにおいて、コントロールマウスと比較して、精巣重量および精子数が減少することを見出した。In situ ハイブリダイゼーション法によるマーカー解析から、Obif KO雄マウスにおいて円形精子細胞から精子への分化が障害されていることを観察した。Obif KO雄マウスはコントロール雄マウスと比較して、野生型雌マウスを妊娠させる能力(妊孕性)に関して医計学上の有意差は認められなかったものの、妊孕性の低下傾向が観察された。以上からObifは、マウスの精子形成に関与することが示された。本研究は、Obifが複数の組織の発生において重要な役割を担う分子であることを示すものである。
参考文献
1) Kanamoto T et al., BMC Dev Biol. 2009; 9; 70.
2) Mizuhashi K et al., Dev Growth Differ. 2012; 54(4): 474-80.
著者コメント
最近、脳においてObifがマイクログリアに特異的に高い発現を示すことが明らかになっており、神経科学分野においても注目されている分子の一つです。
本年よりミシガン大学歯学部小野研究室へポスドクとして留学し、引き続き骨発生の研究を行っております。本論文に関して、古川教授のご指導のもと茶屋太郎博士をはじめとする教室員の皆様のご協力をいただき、深く感謝いたします。(大阪大学蛋白質研究所分子発生学(研究室)・水橋 孝治)