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関節リウマチにおける前腕の傍関節骨粗鬆は関節破壊と機能障害に相関する

Periarticular osteoporosis of the forearm correlated with joint destruction and functional impairment in patients with rheumatoid arthritis.
著者:Iwata T, Ito H, Furu M, Hashimoto M, Fujii T, Ishikawa M, Yamakawa N, Terao C, Azukizawa M, Hamamoto Y, Mimori T, Akiyama H, Matsuda S.
雑誌:Osteoporos Int. 2015 Aug 5. doi: 10.1007/s00198-015-3256-1. Epub ahead of print.
  • 関節リウマチ
  • 傍関節骨粗鬆
  • 関節破壊

岩田 崇裕

論文サマリー

 関節リウマチ(RA)において手のX線における傍関節骨粗鬆はLarsen grade1やSteinbrocker stage2に記載があるように、最も早期に起こる特徴的な所見である。大腿骨頚部の骨粗鬆症と関節破壊に相関があるという報告はあるが、前腕の傍関節骨粗鬆と関節破壊の関連については報告がない。(1)前腕傍関節の各ROIにおけるBMD、(2)前腕傍関節BMDと関節破壊、機能障害の相関、(3)前腕傍関節BMDの減少を予測する因子、(4)関節破壊の寛解/非寛解別の前腕傍関節BMDを明らかとすることを本研究の目的とした。京都大学リウマチセンターを受診しKURAMAコホートに登録されたRA患者370名を対象として横断研究を行った。評価項目は、年齢、罹病期間、血液、投薬などの基礎データ、疾患活動性DAS28-ESR、身体機能HAQ、DASH、橈骨遠位端骨密度DXA、関節破壊Larsen grade、mTSSとした。DXAは橈骨遠位端からやや近位のUD、MID、1/3に分けて計測し、この部位を前腕傍関節と定義した。またUDは海綿骨、1/3は皮質骨を反映すると定義した。平均年齢62.9歳、罹病期間14.9年、DAS28-ESR 3.21、HAQ 0.84、手のmTSS 77.8であった。UDのBMD(YAM値)は73.5±19.5%、1/3は80.9±21.1%であり、UDは1/3と比較して有意に低値であった。UDのBMDは発症当初からYAM値80%を下回ったのに対して、1/3は発症当初90%以上あったが罹病期間とともに低下した。また、UDと1/3のBMD減少に関与する因子を解析するために単変量解析を行ったところ、年齢、罹病期間、炎症マーカー、ステロイド/生物学的製剤/ビスホスホネート製剤の使用有無、DAS28-ESRの他に、HAQ/DASH、Larsen grade/mTSSと有意な相関を認めた。これらの因子に対して多変量解析を行ったところ、UDのBMD減少は年齢とHAQ、1/3のBMD減少は年齢、HAQに加えてmTSSが独立した予測因子であった。さらに、1/3のBMD減少と関連があった関節破壊に注目して、関節破壊の寛解、非寛解別で解析したところ、前腕傍関節BMDは、寛解群と比較して非寛解群で低下していた。また、発症2年未満の早期RA患者を、同様に関節破壊の寛解、非寛解別で解析したところ、1/3のBMDは、寛解群と比較して非寛解群で有意に低下していた。以上より、RAの前腕遠位端において、UDすなわち海綿骨の傍関節骨粗鬆は発症前から存在していた。関節破壊・機能障害は、前腕傍関節の1/3すなわち皮質骨骨密度減少の独立した予測因子だった。RAにおける主要な治療標的は関節破壊・機能障害の抑制である。今回、手の関節破壊・機能障害と前腕傍関節の骨密度が関連することが明らかとなった。従来の手のX線だけでなく、前腕骨BMD計測もRAの治療ストラテジーに重要であり、前腕傍関節の骨代謝の改善は将来の治療標的になり得る可能性が示唆された。

岩田 崇裕

岩田 崇裕

岩田 崇裕

著者コメント

 RAの前腕傍関節骨粗鬆について科学的に調査した論文は過去にほとんどありませんでした。本研究により、RA治療において前腕傍関節のDXA測定は意義があり、同部位の骨代謝改善が将来の治療標的になり得るという新たな知見を示すことができました。私は岐阜大学整形外科秋山教授の御厚意により京都大学整形外科へ国内留学させていただく機会を頂きました。京都大学整形外科では伊藤准教授の御指導の下、RAの臨床研修および研究をさせていただきました。本論文は、KURAMAコホートという京大リウマチセンターの先生方の日頃の努力により蓄積された膨大なデータベースによって完成することができました。データの抽出から統計学的解析まで多くの方々に支えていただきました。この場をお借りしまして深謝させていただきます。最後に、本研究に多大な御指導・御協力を賜りました松田教授をはじめとする共著者の皆様方に厚く御礼を申し上げます。(高山赤十字病院 整形外科・岩田 崇裕)