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イヌ3壁性歯周組織欠損モデルにおけるFibroblast Growth Factor-2 (FGF-2)の歯周組織再生促進作用の機序

Action Mechanism of Fibroblast Growth Factor-2 (FGF-2) in the Promotion of Periodontal Regeneration in Beagle Dogs.
著者:Nagayasu-Tanaka T, Anzai J, Takaki S, Shiraishi N, Terashima A, Asano T, Nozaki T, Kitamura M, Murakami S.
雑誌:PLoS One. 2015 Jun 29;10(6):e0131870
  • FGF-2
  • 歯周組織再生
  • 歯周病

田中 利江

論文サマリー

 塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF-2)は、その優れた歯周組織再生作用が種々の動物モデル及び臨床試験において報告されている。しかし、in vivoにおける詳細な作用機序の解析は実施されていなかった。そこで、イヌ3壁性歯周組織欠損モデルを作製し、FGF-2投与3、 7、14及び28日後の新生組織量及び増殖細胞数、血管新生を組織学的に定量評価した。また、real-time PCRにより投与7及び14日後の新生組織における骨形成関連遺伝子の発現を解析した。

 組織学的な評価から、FGF-2により、投与7日後、出血巣の消失、歯根面における結合組織の形成、新生骨の形成及び血管新生が有意に促進された。この欠損部における新生組織の早期形成は、歯肉の高さを維持して再生領域を確保するのに大きな役割を果たし、FGF-2による14日後の新生骨の高さの亢進、28日後の新生セメント質及び新生歯根膜の形成促進に繋がったと考えられた(図1)。

田中 利江

すなわち、再生初期にFGF-2により新生組織の形成が促進されることが、最終的に歯周組織再生量の増大をもたらすと考えられる。次に、この新生組織の由来及びFGF-2の作用を解明するため、PCNA陽性である増殖性細胞の分布を観察した。増殖性細胞は、既存骨及び歯根膜から出現し、欠損部全体へと広がっていくこと、FGF-2により細胞の早期出現及び総数の増加が起こることを明らかにした(図2)。

田中 利江

これらPCNA陽性細胞は、vimentin陽性であったことから、骨髄及び歯根膜由来の線維芽細胞であると考えられた。上記線維芽細胞に含まれるとされる間葉系幹細胞は、骨・歯根膜・セメント質への分化能を有する。従って、FGF-2は、骨髄及び歯根膜由来の線維芽細胞の増殖を早期に亢進することで、欠損部全域を早期に細胞で満たし、新生組織の形成促進を促したと考えられた。さらに、FGF-2によりBone morphogenetic protein-2 (BMP-2)、Osterix、alkaline phosphatase、osteocalcinの発現が上昇した。この結果より、FGF-2による骨形成促進にはBMP-2の発現亢進が関与することを示唆された。

 以上のことから、本研究は、「FGF-2により細胞増殖、血管新生及びBMP-2産生が亢進されることが、新生組織の早期形成に繋がり、歯周組織の形成促進をもたらす」という機序をin vivoにて示した。

著者コメント

 FGF-2による歯周組織再生作用は、その有効性は既に臨床試験でも報告されており、歯周病治療薬として実用化目前です。本論文では、臨床では実施し難い組織学評価などの手法を用い、FGF-2の歯周組織再生促進作用の機序を明示できたと考えています。大動物を用いた試験であるため、評価時点や例数を絞らざるを得えない、抗体やプライマーなど種類が限定されるなど苦慮することもありました。
 本研究の遂行にあたり多大なるご指導頂きました大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座 村上伸也教授、また、科研製薬株式会社新薬創生センター薬理部 安齋純研究員に心より感謝申し上げます。最後に、本研究の機会を与えて下さいました科研製薬株式会社の皆様に厚く御礼申し上げます。(科研製薬/大阪大学大学院歯学研究科・田中 利江)