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進行性骨化性線維異形成症から同定された2種類のALK2変異体はII型受容体に対する感受性が異なる

Mutant activin-like kinase 2 in fibrodysplasia ossificans progressiva are activated via T203 by BMP type II receptors.
著者:Fujimoto M, Ohte S, Osawa K, Miyamoto A, Tsukamoto S, Mizuta T, Kokabu S, Suda N, Katagiri T.
雑誌:Mol Endocrinol. 2015 29(1):140-52.
  • FOP
  • ALK2
  • 骨形成蛋白(BMP)

藤本 舞

論文サマリー

 進行性骨化性線維異形成症(Fibrodysplasia Ossificans Progressiva; FOP)は、幼少期から骨格筋組織内に異所性骨化を生じる遺伝性疾患である。これまでに早期に発症する典型的FOP症例から、BMPのI型受容体の1つであるALK2の機能獲得型変異が同定されていた。しかし最近、47歳まで異所性骨化を生じなかった遅発性FOP症例から、新規のALK2変異体が同定された。

 そこで、典型的FOP症例と遅発性FOP症例から同定されたALK2変異体を用いて細胞内シグナルの活性化機構を解析した。典型的FOPおよび遅発性FOPのいずれのALK2変異体も、C2C12細胞に過剰発現させるとBMP活性を示す機能獲得型変異体で、BMPのII型受容体であるBMPR-IIまたはActR-IIBとの共発現でその活性がさらに上昇した。II型受容体による活性化は、これまでにFOP症例から同定された12種類のALK2変異体全てに認められたが、心疾患から同定されたALK2変異体では認められなかった。このII型受容体によるFOPのALK2変異体の活性化は、II型受容体のキナーゼ活性依存的であった。ALK2のリン酸化部位であるGSドメインの9つ全てのセリン・スレオニン残基をアラニン・バリン残基に置換すると、FOPのALK2変異体のII型受容体による活性化が阻害された。9つのセリン・スレオニン残基のうち、T203残基がII型受容体による活性化に必須であった。T203残基を酸性アミノ酸に置換しても、ALK2の活性化は認められず、II型受容体存在下でも活性化は見られなかった。

 次に、FOPのALK2変異体をC2C12細胞に過剰発現させると、野生型ALK2よりも高度にリン酸化され、II型受容体の共発現でさらにリン酸化レベルが上昇した。ALK2にT203V変異を導入すると、ALK2のリン酸化レベルが低下した。ALK2のT203は、他のI型BMP受容体にも保存されており、これらスレオニン残基はリガンド刺激によるBMPシグナルの活性化に必須であった。

 以上の結果から、FOPのALK2変異体はII型BMP受容体によって活性化を受けやすい変異体であることが明らかとなった。ALK2の変異部位により、活性化するII型受容体が異なることが、各ALK2変異体によるFOPの臨床症状の違いに関与する可能性がある。ALK2変異体のII型受容体による活性は、II型受容体のキナーゼ活性依存的で、ALK2のT203残基が必須であった。しかし、ALK2のT203残基は自身がリン酸化されて活性化するのではなく、ALK2分子内の他の残基のリン酸化レベルを制御することによって、ALK2の活性化を調節する可能性が示された。本研究により初めて明らかとなったFOPのALK2の活性化メカニズムに基づき、今後、新規のFOP治療法開発の可能性も示された。

著者コメント

 私が研究に足を踏み入れたのは、大学院博士課程への入学がきっかけでした。当初は右も左もわからない状況でしたが、日々の研究を行っていくうちに、研究に対する基本的姿勢や考え方を学ぶことができました。本論文を発表するまでには、多くの壁にぶつかり、諦めそうになることもありましたが、研究室のメンバーをはじめとする多くの先生方のご指導、ご協力のおかげで進めることができました。今回、FOPのALK2活性化メカニズムを報告いたしました。これが、疾患治療法の基盤確立に貢献できれば幸いです。本研究の遂行にあたり多大なご協力を賜りました須田教授、片桐教授をはじめとする共著の先生方および研究室員の皆様に厚く御礼申し上げます。(埼玉医科大学 ゲノム医学研究センター 病態生理部門・藤本 舞)