日本骨代謝学会

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TOP > 1st Author > 梅澤 明弘

長期移植系細胞運命決定に伴う内軟骨性骨化モデルシステム

Endochondral ossification model system: designed cell fate of human epiphyseal chondrocytes during long-term implantation.
著者:Nasu M, Takayama S, Umezawa A
雑誌:J Cell Physiol. 2015 Jun;230(6):1376-88
  • 多指症
  • 異種移植
  • 分化転換

梅澤 明弘

論文サマリー

国立成育医療研究センターでは、150名程度の多指症患者が来院する。手術検体は指であり、その中には多種類のヒト細胞が含まれる。これらの細胞を用いることにより、軟骨を含めたヒト組織を再構築できるかどうかを検討したのが本研究である。多指症の軟骨から単離した軟骨細胞を培養して免疫不全動物の背部に移植すると、軟骨形成を生じ、その後に内軟骨性骨化し、骨髄が形成される。培養軟骨細胞を用いて、できるだけ大きな軟骨組織を作製したいと意気込んでおり、最終的にはマウス背部に亀の甲羅のような軟骨を形成できた(図1)。

梅澤 明弘

これらの過程には、おおよそ一年を必要とする。骨髄内に存在する造血細胞は宿主であるマウス由来であるものの、血管内皮はヒト由来であり、ヒト血管内皮に囲まれた血管腔にはマウス赤血球が存在することより、マウス血管と吻合したことがうかがわれた(図2)。

梅澤 明弘

 多指症由来軟骨細胞を移植して三ヶ月くらいの間は軟骨のみであり、その中に血管形成はない。その後の経過をフォローアップすると、半年くらいたった時点でヒト由来の血管内皮細胞が完成した軟骨周辺から出現する。本研究で示された経過は内軟骨性骨化としてよく知られているものの、マウスとヒトに由来する細胞は抗体を使用することで容易に判別でき、マウス背部に形成された軟骨にはヒト軟骨細胞しか存在しないと思われたが、その軟骨周辺には骨芽細胞、脂肪細胞、血管内皮細胞に分化できる細胞が潜伏していると結論づけた。軟骨周辺の細胞が脱分化して血管内皮へ再分化した可能性か、軟骨周辺にある細胞は六ヶ月間血管内皮マーカーを発現していないものの未分化性を有しており内皮細胞へ分化した可能性があると考察した。

著者コメント

 著者が三名からなる研究論文であり、著者三名の平均年齢は60歳を超える(正確には62歳程度)。この三名が八年の月日をかけた、極めてストレートフォワードな研究である。今後は、本研究の延長線上にある研究を仕上げたいと、この三名の研究者チームは意気込んでいるが病気せずに最後まで行けるだろうか。テーマは、「多指症軟骨細胞の試験管内シネスセンス過程は、生体軟骨発生過程を模倣できるか。」である。健康に気をつけながら、気合を入れて頑張りたい。(国立成育医療研究センター 再生医療センター 細胞医療研究部・梅澤 明弘)