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Rab27Aは破骨細胞での多核化を調節する細胞表面受容体とリソソーム関連オルガネラの輸送を制御する

Rab27A Regulates Transport of Cell Surface Receptors Modulating Multinucleation and Lysosome-Related Organelles in Osteoclasts.
著者:Shimada-Sugawara M, Sakai E, Okamoto K, Fukuda M, Izumi T, Yoshida N, Tsukuba T.
雑誌:Sci Rep. 2015 Apr 16;5:9620. doi: 10.1038/srep09620
  • 破骨細胞
  • Rab27A
  • リソソーム関連オルガネラ

筑波 隆幸・菅原 めぐみ

論文サマリー

 破骨細胞では、リソソーム関連オルガネラ(LROs)と呼ばれる“特殊なリソソーム”を形成して骨吸収を行っている。しかしながら、破骨細胞におけるLROs形成の詳細なメカニズムは明らかになっていない。本研究では、破骨細胞分化過程においてmRNAレベルが発現上昇する遺伝子Rab27Aを同定し、破骨細胞におけるLROs形成に関する本遺伝子の役割を解析した。Rab27Aはsmall GTPasesのRabファミリーに属しており、ヒトにおいて、Rab27A変異はGriselli症候群と呼ばれる疾患を呈し、皮膚などの色素脱失、免疫機能不全を惹起することが知られている。

 まずDNAマイクロアレー解析を行い、破骨細胞分化過程で発現レベルが上昇する遺伝子としてRab27A遺伝子を同定した。RANKL刺激して破骨細胞分化を誘導すると、Rab27AをノックダウンしたRAW-D細胞ではコントロールに比べ、細胞の多核化と巨大化を示した。同様に、Rab27A遺伝子変異を持つAshenマウス由来のマクロファージをRANKLおよびM-CSFで刺激を行い培養すると、多核化と巨大化が観察された。

 Ashen破骨細胞が多核化と巨大化される分子メカニズムとして、同細胞では受容体の輸送異常とその下流シグナルの増強が観察された。Ashen破骨細胞では、M-CSFとRANKL刺激に対して、Erk、p38、Aktのリン酸化レベルが上昇した。さらに、FACS解析により、M-CSFの受容体であるc-fmsの細胞膜の発現レベルがAshen破骨細胞では高くなることが分かった。またRANKLの受容体であるRANKは受容体のダウンレギュレーションが異常になっており、細胞内に長く留まっていた。これらの結果は、Rab27A欠損により受容体の輸送異常とその受容体のシグナルが増強している事を示唆している。

 一方Ashen破骨細胞では、細胞内で形成されるLROsの輸送が異常になっていた。野生型とAshen破骨細胞を比較すると、Ashen破骨細胞では、骨吸収に重要なactin ringの形成が異常になっており、リソソームタンパク質であるLAMP2、あるいはカテプシンKの局在が異常になっていた。またAshen破骨細胞では、種々のリソソームタンパク質の量が異常になっていることや、骨吸収能が有意に低下していることが分かった。

 以上の結果から、Rab27Aは破骨細胞での多核化を調節する細胞表面受容体とLROsの輸送を制御することが示された。
(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 医療科学専攻 生命医科学講座 歯科薬理学分野・筑波 隆幸)

筑波 隆幸・菅原 めぐみ

著者コメント

 破骨細胞は細胞同士が融合して形成される多核の巨細胞のため、データーにばらつきが生じないようにしていくためには、とても慎重に実験する必要があり苦労しました。本研究ではRab27Aが破骨細胞においてリソソーム関連オルガネラの輸送と多核化を調節することを示しましたが、限られた時間の中で詳細なメカニズムまでは解明できず、今後の検討により明らかになることを期待しています。
筑波隆幸教授は歯学部4年生以来研究できる環境を整えてくださり、ご指導くださいました。坂井詠子先生はサイエンスの楽しさから破骨細胞のことについても熱心にご指導くださり、先生のおかげでここまで研究を続けることができたと思っています。またAshenマウス、Rab27Aプラスミドを御供与くださった、群馬大学の泉哲郎教授、東北大学の福田光則教授には深く感謝申し上げるとともに、吉田教明教授をはじめたくさんのご助力いただいた共著者の皆様に心より感謝申し上げます。
(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 医療科学専攻 生命医科学講座 歯科薬理学分野・菅原 めぐみ)