日本骨代謝学会

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ドパミンD2様受容体シグナルはヒト破骨細胞形成を抑制する

Dopamine D2-like receptor signaling suppresses human osteoclastogenesis.
著者:Hanami K, Nakano K, Saito K, Okada Y, Yamaoka K, Kubo S, Kondo M, Tanaka Y.
雑誌:Bone. 2013 Sep;56(1):1-8.
  • 破骨細胞
  • ドパミン受容体シグナル
  • 骨吸収

花見 健太郎

論文サマリー

神経系、及び神経伝達物質が骨代謝に及ぼす影響が注目されてきた。
ドパミンは中枢神経における最も主要な神経伝達物質であるが、骨代謝系への影響については不詳である。造血細胞は様々な神経伝達物質の受容体を発現する事より、神経伝達物質による末梢血単球由来破骨細胞形成系に対する影響が考えられるが、ドパミンシグナル伝達による破骨細胞形成系への影響は不明である。
本研究では、ドパミン受容体シグナルを介するヒト破骨細胞への直接的な影響について検討を行った。

健常人末梢血より単球を分離し、M-CSF、RANKLを分化刺激因子として添加して破骨細胞分化誘導を行い、ドパミン関連刺激を加えた際の破骨細胞分化、成熟への影響を検討した。ドパミン受容体は、細胞内cAMP濃度を上昇させる作用をもつGαsサブユニットと共役するD1様受容体(D1,D5)、細胞内cAMP濃度を低下させるGαiサブユニットと共役するD2様受容体(D2,D3,D4)に分類される5つのドパミン受容体を介してシグナルを伝達するが、ヒト単球及び破骨細胞前駆細胞においては、D1~D5ドパミン受容体のいずれの発現も確認できた。
次に、RANKL刺激時のドパミン及びD2様受容体作動薬添加により、TRAP陽性多核細胞は有意に減少した。ドパミン及びD2様受容体作動薬は、RANKL依存性の破骨細胞特異的遺伝子cathepsin Kの発現を有意に抑制し、象牙切片上の骨吸収窩面積を減少させた(図)

花見 健太郎

さらに、ドパミン及びD2様受容体作動薬は、培養4日目の細胞内cAMP濃度、核内転写因子c-Fosの発現及び破骨細胞前駆細胞核内への移行を制御することで、破骨細胞分化のマスターレギュレーターであるNFATc1の発現を抑制した。ex vivoにおいては、LPS刺激マウスに経口的にD2受容体作動薬を加える事により、マウス骨髄由来破骨細胞分化を抑制した。
以上より、ドパミン受容体D2様受容体シグナルは細胞内cAMP濃度の低下とともに、c-Fos及びNFATc1の発現を抑制し、ヒト破骨細胞形成を直接的に抑制する事が示された。

本研究の結果より、ドパミン受容体シグナルが破骨細胞形成系へ直接的に作用し、骨代謝における重要な役割を担っていることが示された。実際、シナプス前終末への迅速な取り込みによってドパミン活性を制御するドパミントランスポーターを欠くノックアウトマウスでは、骨量の減少を示すことが報告されている。我々の結果と併せると、ドパミン等の交感神経系から骨代謝を調節するシグナルが伝達されること、また、臨床的に抗精神病薬として使用するD2様受容体阻害薬やパーキンソン病薬として使用するD2様受容体作動薬は、骨量へ影響を与えている可能性が示唆された。

著者コメント

卒後2年間の臨床研修終了後、内科臨床医としての修練を希望し、本講座に入局しました。膠原病リウマチ科を専攻し、臨床に馴染んできた7年目に大学院進学の機会を頂きました。
研究室ではリンパ球解析、細胞内シグナル解析など多彩な研究内容がある中から、私は骨代謝・破骨細胞をテーマとして選択しました。田中良哉教授をはじめとした素晴らしい指導者に恵まれて、臨床の修練と並行して実験を行い、本研究をまとめることができました。また、海外学会発表など楽しい経験もさせて頂きました。
この充実感を他の若手先生方にも味わって欲しいと思います。九州地方に興味がある先生は、ぜひ私たちと一緒に臨床修練や研究をしてみませんか。(産業医科大学第1内科学講座・花見 健太郎)

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