日本骨代謝学会

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メバロン酸代謝物はゾレドロン酸による破骨細胞分化抑制作用を減弱させる

Mevalonates Restore Zoledronic Acid-induced Osteoclastogenesis Inhibition.
著者:Nagaoka Y, Kajiya H, Ozeki S, Ikebe T, Okabe K.
雑誌:J Dent Res. 2015 Apr; 94(4):594-601
  • 破骨細胞
  • ビスフォスフォネート
  • 顎骨壊死

鍛治屋 浩・長岡 良礼

論文サマリー

ビスフォスフォネート関連顎骨壊死(BRONJ)は、窒素含有ビスフォスフォネート製剤(NBPs)を長期服用した患者が抜歯などの外科的侵襲を受けた際に、骨の露出や腐骨の形成などが起こる疾患である。近年、破骨細胞の分化・生存を抑制する抗RANKL抗体によっても顎骨壊死の報告があることから、破骨細胞の分化抑制とそれに伴う骨リモデリングの抑制がBRONJ発症の一因となるのではないかと考えた。
MCS-F存在下で培養したマウス骨髄細胞を破骨細胞前駆細胞とし、RANKL投与による破骨細胞分化・誘導過程におけるNBPsのゾレドロン酸とメバロン酸代謝物の効果について検討した。ゾレドロン酸によりTRAP陽性の多核細胞数は濃度依存性に減少し、逆に単核細胞数が増加した。同時に、ゾレドロン酸は成熟破骨細胞マーカーであるTRAP、カルシトニン受容体、液胞性プロトンポンプや細胞融合関連分子のDC-STAMPやOC-STAMPの発現を抑制した。一方、ゾレドロン酸とメバロン酸代謝(GGOHやGGPP)を併用した場合、ゾレドロン酸による破骨細胞形成抑制の減弱がみられ、同時にDC-STAMPやOC-STAMPの発現抑制の減弱が認められた。
In vivoでBRONJ誘発モデルマウスを作製するために、ゾレドロン酸とLPSを2週間腹腔内投与した。その後、上顎臼歯を抜歯し、両薬剤を4週間継続的に投与する場合(コントロール群)とメバロン酸代謝物を併用投与した場合(メバロン酸群)について、抜歯窩の骨再石灰化を検討した。コントロール群は抜歯後4週において炎症性細胞の侵入、骨細胞の凝集や骨小腔の空洞化など骨壊死様像が認められた。同時に、顎骨骨密度の減少とTRAP陽性細胞数の減少が認められた。一方、メバロン酸群は骨壊死様像がほとんど認められず、骨密度の回復と破骨細胞数の増加がみられた。
これらの結果よりNBPsは破骨細胞分化過程における細胞融合を抑制し、破骨細胞形成が抑制され、骨リモデリングが阻害することでBRONJを誘発させる可能性が示唆された。さらに、メバロン酸代謝物は破骨細胞分化過程におけるNBPsの効果を減弱させ、抜歯窩における骨リモデリングを正常に導くことでBRONJを回避させる可能性が示唆された。(福岡歯科大学・鍛治屋 浩)

著者コメント

 BRONJはMarxらによる2003年の報告以来、歯科医師はもとより医師の先生方にも広く知られる疾患となりました。しかしながらその重篤性が一人歩きして、本来であれば緊急を伴うはずの処置も、タイミングを逃すケースも多く見受けられています。一方、BRONJは一旦発症すると難治性であり、治療法の確立も急務であると考えています。本研究が臨床におけるNBPsの正しい理解とBRONJのメカニズムの解明の一助になれば幸いと考えています。本研究を行っている途中、破骨細胞が全くできず途方に暮れる時期がある中、決して暖かくはありませんでしたが辛抱強く私の実験進捗状況を見守って下さった鍛治屋先生、岡部先生、また研究の楽しみを教えてくださった多くの先生方に深く感謝いたします。又、毎日午前様でも文句しか言わず、家を守って頂いている妻にこの場を借りて感謝と反省を申し上げます。(福岡歯科大学 口腔顎顔面外科学・長岡 良礼)