日本骨代謝学会

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破骨細胞に由来する補体成分C3aは骨芽細胞分化を刺激する

Osteoclast-Derived Complement Component 3a Stimulates Osteoblast Differentiation.
著者:Matsuoka K, Park KA, Ito M, Ikeda K, Takeshita S.
雑誌:J Bone Mineral Res. 2014 Jan 28. doi: 10.1002/jbmr.2187.
  • 骨カップリング因子
  • 破骨細胞
  • 補体

竹下 淳

論文サマリー

骨リモデリングは骨吸収に引き続き起る骨形成によるカップリング(共役)により制御されているが、カップリング因子とそれらの作用機序は完全には明らかにされていない。我々は、骨芽細胞と破骨細胞を共存培養すると骨芽細胞の分化マーカーの一つであるアルカリフォスファターゼ(ALP)活性が上昇することを発見した。また、その活性は成熟破骨細胞の培養上清中に含まれることを見出した。
そこで、マウス骨髄細胞からM-CSF産生細胞の培養上清を用いて骨髄マクロファージ(BMM)を調整し、M-CSFとRANKLを用いて破骨細胞を大量培養し、3リットルの培養上清を調整した。得られた培養上清を限外ろ過後、各種イオンクロマトグラフィー、及びConAカラムを用い、骨芽細胞のALP活性を指標にしながら骨芽細胞分化促進因子の精製を行った。ALP誘導活性を約3000倍に濃縮したサンプルをSDS-PAGEで展開し、マススペクトル解析により液性因子の同定を試みた。その結果、補体成分の一つであるC3を同定した。C3は分解酵素によりC3aとC3bに切断され、前者はアナフィラトキシンとして細胞の遊走活性を促進するのに対し、後者は補体の活性化の中心的役割を演じるC3コンバターゼの一部として働くことが知られている。我々は、前者のC3aに注目し、破骨細胞の培養上清中にC3aを検出した。shRNAを用いて破骨細胞でC3をノックダウンすると、その培養上清中のALP活性を促進する活性が低下すること、C3a受容体アンタゴニストの添加によりALP促進活性が抑制されること、C3a受容体アゴニストによりALP活性が上昇することが分かった。また、マウスに卵巣摘出(OVX)を施すと骨吸収が促進され、骨におけるC3の発現が上昇し、骨髄中のC3aの量が増加した。さらに、マウスにRANKLを投与し、骨吸収を促進しても骨におけるC3の発現は上昇した。
そこで、生体内におけるC3aの機能を解析するためにOVX処理したマウスにC3a受容体アンタゴニストを投与し骨解析を行った。その結果、OVXによる骨吸収後に誘導される骨形成はC3a受容体アンタゴニストの投与により打ち消され、アンタゴニスト未処理OVX群よりさらに骨量が低下した。
以上の結果から、破骨細胞由来のC3aは骨吸収から骨形成へのカップリング機構に重要な役割を担うカップリング因子であることが示唆された。

竹下 淳
破骨細胞の培養上清は骨芽細胞分化を促進する

著者コメント

骨芽細胞と骨髄細胞の共存培養系にビタミンD3を添加すると破骨細胞を誘導することができるが、これは高橋直之先生らが開発した有名な破骨細胞の培養法である。ALP活性は骨芽細胞の分化マーカーであリ、この培養系のALP活性を測った人はおそらくいないと思う。
我々は、骨髄由来マクロファージにM-CSFとRANKLを加え、そこに骨芽細胞を加えて共存培養しALP活性を測定したところ、RANKL未添加群よりALP活性が高いことを見出した。それから直ちに破骨細胞を大量に培養し、活性因子の精製を試みたが、タンパク精製など精々GST-RANKLが関の山、生化学の教科書をあさったり古い知り合いを頼って精製法を聞いたりしたが、一向に純度が上がらなかった。
そんなときに徳島大学から本論文のファーストオーサーである松岡さんがやってきた。渡りに船で精製をお願いして今に至った。(国立長寿医療研究センター・竹下 淳)