日本骨代謝学会

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骨細胞におけるRANKL細胞内局在とその制御機構

RANKL subcellular trafficking and regulatory mechanisms in osteocytes
著者:Masashi Honma, Yuki Ikebuchi, Yoshiaki Kariya, Madoka Hayashi, Naoki Hayashi, Shigeki Aoki and Hiroshi Suzuki
雑誌:J Bone Miner Res. 2013 Sep;28(9):1936-49
  • 骨細胞
  • RANKL
  • OPG

本間 雅

論文サマリー

近年、生理的な成熟破骨細胞形成制御において中心的な役割を果たしているのは骨細胞であることが報告されたが、骨基質内に包埋される形で存在する骨細胞が、どのようにして破骨前駆細胞へRANKLシグナルを供給しているのかに関しては、不明な点が多く残されているため、この点を明らかにすることを目標とした。

マウスより単離した初代骨細胞を平面培養した場合、経時的に脱分化することが知られているが、Ⅰ型コラーゲンのゲル中に包埋して三次元培養をすることで、脱分化を遅延できることが明らかとなった。そこで、三次元培養した初代骨細胞と破骨前駆細胞の間に多孔質フィルターを挟んで共培養を行う系を考案した。共培養開始5~9日目にかけてTRAP陽性多核細胞の形成が顕著に確認され、この共培養系を用いて骨細胞による成熟破骨細胞形成支持過程を評価可能であると考えられた。またこの際、培地中の可溶性RANKLレベルは0.1 ng/mL程度であったが、破骨前駆細胞の単独培養系に可溶性RANKL組み換えタンパク質を添加して直接刺激を行った場合、10 ng/mLまで濃度を上昇させても、共培養系と同等の成熟破骨細胞形成は観察されなかった。また、TIMP-2組み換えタンパク質を共培養系メディウム中に添加したところ、TIMP-2濃度依存的に可溶性RANKLの生成低下が観察された一方で、TRAP活性に有意な影響は生じなかった。そこで共焦点顕微鏡を用いた解析を行ったところ、骨細胞は多孔質フィルターのポアを介して樹状突起をフィルター逆側まで進展し、複数の破骨前駆細胞と接触している様子が観察された。これを踏まえ、多孔質フィルターを二重にする、あるいはフィルターのポアサイズをより小さいものに変更することで、樹状突起の進展を妨げる検討を行った結果、いずれの場合もTRAP活性の顕著な低下が認められた。

一連の結果は、骨細胞から破骨前駆細胞へのRANKLシグナル供給は、直接接触を介して生じていることを示唆している。細胞間接触を介したシグナル入力を考えた場合、骨細胞表面に提示されているRANKL分子の量はシグナル入力強度を決定する主要因の1つと考えられる。そこで、骨細胞におけるRANKL細胞内局在とその制御機構に関しても検討を加えた結果、過去に骨芽細胞に関して明らかになっているのと同様に、骨細胞においてもRANKLは主としてリソソームに局在しており、OPGによるRANKLの細胞内選別輸送制御機構は、デコイ受容体としての機能に加え、RANKLシグナル調節機構の一部として機能していることが示された。

本間 雅

著者コメント

私は、学生時代は薬剤学・薬物動態学という全く異なる分野を専攻しており、骨代謝の研究に初めて触れたのは、製薬企業で骨粗鬆症治療薬の開発研究に参加した時でした。研究所の先輩に恵まれたこともあり、企業在籍中で最も幅広い経験をさせていただいた時期でした。
その後、東大病院・薬剤部の鈴木教授に大学で研究する機会を与えていただき、創薬に繋がりうる研究を一から立ち上げてみようとなった時に、骨代謝研究に改めて取り組んでみようと思いました。
目指す大学発創薬への道のりは遠いですが、頼もしく成長した研究室の後輩達とも力を合わせつつ、一歩ずつ前に進めればと思っています。(東京大学医学部附属病院薬剤部・本間 雅)