日本骨代謝学会

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BMP-2により誘導される転写因子Alx3は骨芽細胞分化を促進する

BMP-2 induced expression of Alx3 that is a positive regulator of osteoblast differentiation
著者:Matsumoto T, Yamada A, Aizawa R, Suzuki D, Tsukasaki M, Suzuki W, Nakayama M,
Maki K, Yamamoto M, Baba K, Kamijo R.
雑誌:PLoS One. 2012 Jun 18;8(6):e68774
  • Alx3
  • 骨形成蛋白(BMP)
  • 骨芽細胞分化

松本 貴志

論文サマリー

骨誘導因子Bone Morphogenetic Protein (BMP) は骨芽細胞の分化や異所性の石灰化を誘導する生理活性物質である。BMPは以前より硬組織再生への応用が検討されてきたが、ヒトはBMPに対する感受性が低く、骨形成を誘導するためには多量のBMPを必要とするため、臨床へ応用することは困難であった。そこで我々は、BMPの骨形成作用を増強する新たなBMP活性促進因子の探索およびその作用機序の解明を行うこととした。

はじめに、マウス筋芽細胞株C2C12細胞にBMP-2を処理し、骨芽細胞へ分化誘導される際の遺伝子発現様式をcDNAマイクロアレイ法により検討した。その結果より、骨芽細胞へ分化誘導される際発現が誘導される遺伝子の中で、ホメオティック遺伝子に属する転写因子Aristaless like homeobox 3 (Alx3) に着目した。Alx3はハムスターインスリノーマ細胞株HIT-T15細胞よりクローニングされ、そのコンベンショナルノックアウトマウスの解析から、顔面頭蓋形成に重要な遺伝子であることが知られている。しかし、Alx3の骨形成における詳細な報告はされていない。
そこで、我々は、BMP-2によるAlx3遺伝子の発現制御機構ならびに骨芽細胞分化に対する作用機序について検討した。Alx3遺伝子はC2C12細胞においてBMP-2の濃度依存的および処理時間依存的に発現が誘導され、それはBMP/Smad径路を介していることが示された。また、BMP-2による骨芽細胞分化誘導におけるAlx3の作用を、Alx3 siRNAによるノックダウンおよび発現ベクターによる強制発現系を用い検討したところ、Alx3はBMP-2による骨芽細胞分化を正の調節することが示された。

Alx3の標的因子を同定するためにクロマチン免疫沈降法とマイクロアレイ法を組み合わせたChromatin immunoprecipitation-On-Chip (Chip-on-Chip)法にて網羅的解析を行ったところ、骨芽細胞分化マーカー遺伝子であるアルカリフォスファターゼが同定された。今後は、骨芽細胞分化におけるAlx3の共役因子の探索・同定を検討することにより、BMPによる骨形成促進作用の新たな機構を明らかにすることができると考えられる。

松本 貴志

著者コメント

私が研究に足を踏み入れたのは、昭和大学大学院博士課程への入学がきっかけでした。
大学院では主科目として歯科補綴学を専攻致しましたが、基礎研究の重要性を訴える馬場一美教授より口腔生化学講座で研究することを薦められました。当初は右も左も分からない状況でしたが、多くの先生方のご指導により、自身の研究を遂行出来たと思います。
基礎生物学の研究は目に見えない事象を探求することが大半であり、いろいろ想像をしながら実験し、最終的にやっと視覚的なデータとして具現化されます。想定したデータが得られた時の感覚が研究の醍醐味だと感じました。現在は診療の合間を縫って、より臨床的な研究に取り組んでおります。
貴重な機会を与えていただいた馬場一美教授、上條竜太郎教授、山田篤講師をはじめ、歯科補綴学講座、口腔生化学講座の皆様に感謝の意は尽きません。(昭和大学歯学部 松本貴志)